放たれた白銀の矢は、白羊宮であろう建物の中に吸い込まれる。
一瞬の沈黙。
そして今度は砂の落ちるような音と共に溢れんばかりの光で示された魔方陣が、白羊宮を始め次々と闇の中に浮かび上がる。
その勢いは、まるで水面に石を落としたかの様だった。
「あの矢は、場所に仕掛けられた呪術を視覚化出来る能力を持っているのです」
沙織の説明に誰もが納得をした。
次々と光の矢は闇の十二宮を飛んで行く。
放物線を描くのではなく頂点の神殿を目指して十二宮に光を与える矢の動きは、まるで呪術の力に反応し、その反発力が推進の原動力であるかのようだった。
この様子は当然、神殿に居たポリュデウケースにも察知される。
だが、二人の黄金聖闘士が同じ部屋に居る為、動く事が出来ない。
「やってくれたな。トロイアの英雄」
ポリュデウケースは不敵な笑みを漏らす。
アフロディーテは何も言わずに、ポリュデウケースの事を見た。
「……イーリオス城陥落の道具を守り通したようだな」
神の言葉は皮肉に満ちていた。
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