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反撃 5

黒の聖域において、白羊宮であろうと思われる建物。
何があったのか、かなりボロボロに痛んでいた。
沙織達は少々離れた所で進む事を止める。
「ミーノス様。これ以上は強行突破になります」
ゴードンの報告にミーノスは春麗を地面におろした。
「女神アテナ。これ以上は呪術の配置が細か過ぎます」
そしてその細かさが、ミーノスたちの冥界異変の原因追求を阻んでいた。
しかし、星矢たち聖闘士には呪術の片鱗も見えない為、何処まで信じて良いのか判らない。
だが、沙織はその言葉に頷くとアルデバランに言って地におろしてもらう。
そしてアルゲティの方を見た。
彼女は白い杖を振って、白羊宮を方を指し示す。
「アルゲティ。やりなさい」
沙織の命令に彼は恭しく頭を下げると、前に進んで白銀の矢を出した。
矢は大弓を使うに相応しい大きさで、闇の中で光を放っている。
いったい何が起こるのか。
だが、誰も何も言わない。
アルゲティが引き絞る弓が、彼の小宇宙と共鳴して淡く輝く。

「ポリュデウケース。 これが私たちの宣戦布告です」

沙織の言葉と共に、矢は放たれたのだった。


初めて見る過去の矢座の聖闘士。
トレミーは目の前に居る青年を、まじまじと見た。
「もしかして……」
『当たりだ』
彼は満足げに笑う。
『とうとう矢は放たれた。 まったく、その現場を気絶して見れなかったとは情けない奴だ』
だが、その言葉に蔑む様な響きは無い。
トレミーは苦笑いをした。
「出来の悪い後継者で悪かったな」
しかし、彼は楽しそうだった。
『まぁ、あの矢を使用可能にまで持ち込んだから、それは褒めてやる。
だが、もう間違えるなよ』
トレミーの目の前で、魔矢の姿は朧げになってゆく。
彼は逝くのだと、若き後継者は気付いた。
「……色々と、迷惑をかけた……」
素直に感謝の言葉を言いたいのだが、どうしても言えない。
そして相手も気付いているのか、いないのか。
あっさりと、
『気持ち悪い奴だな』
と、嫌そうな顔をした。
だが、魔矢は直ぐに表情を和らげる。
『じゃぁな』
そう言って片手をあげる彼に付き合う様に、トレミーも
「じゃぁな」
と言って片手をあげた。
そして魔矢の姿は、小さな光となってその場から飛び立つ。
何処とも判らない世界で上へと向かう光を見送っていると、トレミーはいきなり頬に衝撃を感じた。


「おっ。目が覚めた様だな」
意識を取り戻した途端、一番最初に見た人間は烏座のジャミアン。
しかも彼の肩でカラスがバタバタと羽ばたきをする。
「大丈夫か?」
一応仲間の心配をしてくれているのだろうが、だったら殴るなと言いたい矢座の白銀聖闘士だった。