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反撃 4

「あれっ?
兄さんとエスメラルダさんは?」
瞬が人数の足りなさを指摘する。
「貴鬼も居ませんね」
ムウは自分達が歩いてきた方を向く。
そこに居たのは、鷲座の白銀聖闘士の魔鈴。
沙織が一緒に来る様命じたのだ。
「フェニックスは私の前を歩いていた」
魔鈴はその時の様子を沙織に報告する。
最初は此処までエスメラルダを連れてくる事に一輝は躊躇ったのだが、置いて行く事も聖域に戻す事も今以上に危険でしかないと言われて、自分で彼女を抱き上げて闇の中を下りたのである。
その後ろには貴鬼が付いて行き、最後に魔鈴が穴に入った。
それなら一輝達に何があったのかは直ぐに判る筈だった。
だが、此処に来る直前に彼らは闇に溶け込む様に消えたのである。
「闇に捉えられたという事でしょう」
ミーノスの言葉に瞬は青ざめる。
「それじゃ、兄さんたちは……」
言葉を失う瞬の肩を星矢が叩く。
「あいつなら絶対に大丈夫だ!
直ぐにエスメラルダさんと貴鬼を連れて、ここにやって来るさ」
明るい声に瞬は、
「そうだね」
と言って悪い考えを振り払う。
だが、言った本人の方が別件で背筋が寒くなっていた。
師匠の魔鈴が、聖衣を纏わないで此処に居る自分に何も言わないのである。
(怒っているぞ。これは……)
それが判るだけに、緊張してしまう星矢だった。


ペガサスの神聖衣の前に立つ一人の少年。
一角獣星座の邪武は、忌ま忌ましげに目の前にあるそれを見た。
(強情な所は所有者と同じだな……)
どうして此処に来たのかは判らない。
もしかすると神聖衣は既に此処には無く、星矢の元へ飛び立ったと思いたかったのだろうか?
「今更試した所で、あいつの馬鹿さ加減は変わらないぞ」
彼は言いたい事を言うと、その場から立ち去る。

ペガサスの神聖衣の周囲を、一陣の風が吹き抜けた。