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反撃 3

横穴の中は何処までも深い闇。
この足元すら確認出来ない場所で、春麗などの少女を歩かせるのは危険極まりなかった。
それゆえにミーノスが春麗、アルデバランが沙織、一輝がエスメラルダを抱き上げて降りて行く事になった。
アルデバランは判るとして、ミーノスが東洋人の少女を片腕で支えているのは意外な構図。
「ミーノス。ここの空間は冥界と繋がっていますか?」
沙織の言葉に先頭を歩くグリフォンの冥闘士は振り向かずに答えた。
「影響は感じますが、そんなに強くないですね。 ここの傍には無い様です」
すると星矢がミーノスに近付く。
「冥界に影響を与えているものは、何かモノなのか?」
ミーノスよりも前に出ようとした時、彼の直ぐ前に居たゴードンが星矢の腕を引っ張る。
「無茶をやるな!」
彼の剣幕に星矢はキョトンとする。
「今のはいったい?」
沙織に尋ねられては、ミーノスは答えざるを得ない。
何しろ今の沙織は、パンドラから託された髪飾りを付けているのである。
その存在に逆らうのは躊躇われる。
「今、ペガサスは呪術の引かれている場所に足を踏み入れる所でした。
聖衣を纏っていない以上、無理にそのような空間に入り込めば只では済まないでしょう」
元々、不老不死の秘密に関わる答えを得ようと冥界に侵入する人間は、何らかの呪術が使える可能性が高い。
それゆえ、冥闘士たちは必然的に他の神の闘士達よりも呪術を察知する感覚が優れているのである。
ミーノス自身はそのような力に対抗出来た。
だが今は一般人である春麗を連れているので、呪術の影響を受けない場所をゴードンに探させて降りていたのだ。
後に続く闘士達は、当然前の人間が無事だった場所を選んで通っている。

沙織は不意に女神ヘカテの神殿へ向かう時の事を思い出した。
あの時、あの世界を守護する神獣が出てきたのは、自分達がその領域を侵したから。
(……)
沙織は厳しい眼差しになり、手に持っていた白い杖を強く握った。

そして本当にこの下には黒い神殿があるのかと誰もが考えそうになった時、突如として視界は開ける。
「あっ!」
誰もが驚きの声をあげてしまう光景。
眼下には青白い小さな明かりによって浮かび上がる幾つもの宮。
様子は違えど、確かに聖域とよく似ていた。
「黒の聖域とは良く言ったものですね」
ムウの言葉に誰もが同意した。
ただ、こちらの方が荒々しい雰囲気を漂わせている。