INDEX

反撃 1

人の形をした闇。
蠍座の黄金聖闘士であるミロは、先制を取るべくリストリクションを放つ。
だが、光速の技は相手の身体をすり抜けてしまった。
(面倒だな……)
捉えどころの無い相手に彼の技は通じない。
暗黒そのものとも言うべき敵は、勝ち誇ったかの様な笑みを浮かべて手を伸ばした

ミロはそれを振り払おうとしたが、逆に敵の力を自らの身体に撒き散らす事となった。
彼女の自分を呼ぶ声が聞こえる。
だが、遠い声に感じた。

フラッシュバックのように現れる場面。
自分を親友と呼ぶ男。

(また、誰かの記憶だ……)
ミロは敵の正体を探ろうと意識を集中させる。

大勢のケンタウロスと闘っている自分。
だが、親友が一緒だ。何も恐れる事は無い……。

(勇猛な奴だった様だな)
ミロは大勢のケンタウロスを叩きのめす事に快感すら覚えた。

そして一人の子供が、穏やかな表情のケンタウロスと話をしている。

(ケンタウロスが何故?)
先程の場面で自分に対して攻撃的な行動を見せたケンタウロスを知っている彼は、子供を引き離さなければと思った。
だが、子供はケンタウロスを怖がっていない。
何かイライラした気持ちになる。
(何故、ケンタウロスを怖がらない?)
ミロの疑問に誰かが答えた。

あれは人々からディオスクーロイといわれる子供。
所詮、お前はあの者には敵わない。

男なのか女なのか判らない、しかし嘲笑うような口調。
蠍座の黄金聖闘士は不愉快な気持ちになった。


その瞬間、子供が自分の方を向く。


(カノン!)
子供の頃の彼を見た事は無いが、ミロは直感的に子供をシードラゴンの海将軍であり双子座の黄金聖闘士である青年だと判断した。
そして自分が何故、彼に対して怒りを感じなくてはならないのか。
(これはヤツの意識だ!)
ミロは自分の右手で左肩を持つと、躊躇う事なく自らの小宇宙を放った。

「ミロ!」
自分の目の前で蠍座の黄金聖闘士が自らの左肩を掴み、蠍座の聖衣を砕こうとした事にシャイナは驚きの声を上げた。
聖衣もそれなりに痛めつけられたが、彼の左肩はそれ以上の衝撃を受けた筈である。
急いで駆け寄ると、ミロは壁に寄り掛かりながらズルズルとくずおれた。
「何をやっているんだよ!」
手を差し伸べようとすると、彼は邪険に振り払った。
「煩い。 早くここから脱出しろと言っただろう」
捨て身の反撃に、ミロの中に入り込んだ別人は彼から立ち去ろうとする。
このまま居続けては、自分が激痛を一緒に体験してしまうと判断したからである。
だが、この一本気な男は、敵のそんな行動を許す筈が無かった。
「ロクでも無い場面を見せてくれた礼をしてやる」
ミロは自分の胸に右手を当てた。