瞬間移動を行えば、シオンが沙織を目的地へ運ぶのに時間はかからない。
それでも彼女はとても急いでいた。
外との通信手段を持つ村の豪農の家では、人の良さそうな老婦人が沙織とシオンの為にお茶を用意する。
シオンが一緒の部屋に居るのは、本来女神の養い親側の事は関知しない方が良いのかもしれないが、聖域側が何も知らないというのは女神に負担をかける事なので、それを避ける為である。
沙織もそのつもりで一人で電話をするとは言わない。 「なんですって、それは何時の話なの!」 彼には電話の内容はハッキリとは判らなかったが、日本で誰かが居なくなったらしい事は判った。
「その時間には美穂さんは星の子学園に居たのね!」 女神の切羽詰まった口調。 だが、シオンは別の事で驚いた。 (ミホサン?) 夢の中で会った少女を思い出す。
(日本人にはその名が多いのか?) あの少女が日本人かもしれないと考えると、シオンは探そうとすれば会えるのではないかと考えてしまう。
(その時間を作るには、今いる聖闘士たちを厳しく鍛え直さないとならないのだが……) 教皇の思惑とは別に、女神の方は物凄い剣幕で怒鳴ると電話を切っていた。
「女神アテナ。どなたか居なくなったのですか?」 怒りを抑えてもらう為に、彼は穏やかに話しかける。 しかし、彼女の怒りは治まらない。
「やられたわ……。財団内にまさか伏兵が居たなんて……」 沙織はシオンに状況を話す。 話を聞いた彼はサポート要員として聖域側の関係者に協力させる為、この家の主を呼んだ。 |