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焦燥 3

その炎は、まるで天を焦がすかの様な勢いで吹き上げた。
オルフェは他の白銀聖闘士が来る前に、素早く老人をその場から避難させる。
ダイダロスは手を出す事が許されない神々の審判とも言うべき炎を見つめた。

(これは只の炎で無いな……)
何しろ火柱が立っているというのに、他への延焼の気配がまるで無い。
だが、生き物の様に蠢く炎に阻まれてダイダロスは小屋に行く事が出来ない。
この騒ぎに幾人かの聖闘士たちがやってくる。
「何が起きたんだ」
銀蠅座のディオがやって来た時、ダイダロスが彼に向かって叫んだ。
「アルゲティを連れてくるんだ!」
ディオは何事かと面食らったのだが、昔から知恵者と呼ばれたダイダロスの言葉に異論を唱えず、アルゲティを探しにこの場を離れた。
そして炎は時々得体の知れない獣の様な姿を現しながら小屋を包む。


その闇は何処までも深く、そして強大だった。

「……もしかして迷ったか?」
蠍座の黄金聖闘士は蛇遣い座の白銀聖闘士を担いだまま、その場を見回した。
「迷ったって……。 さっきから、そう言っていただろ!!」
シャイナは担がれたまま、足をバタバと動かす。
「おかしいなぁ。 周囲の様子が変化したから出口に近付いていると……」
彼は緊張感の無い返事を口にした瞬間、敵の存在を感知する。
そしてその気配はシャイナにも判った。
「……」
ミロはシャイナを地面に下ろす。
黄金聖闘士の青年は険しい表情で、素早く敵の力量を探った。
相手はたった一人。
だが、海闘士とか冥闘士といった存在では無さそうだった。
しかし強敵だとミロの本能が告げていた。

『蠍座は傲慢なる狩人を滅ぼす為に、女神ガイアが遣わしたもの』

脳裏に夢の中で聞かされた言葉が蘇る。
「シャイナ!
ここから離れろ」
この瞬間、ミロは自分がここに誘き出された事を知る。
そして彼らの目の前で、闇は人の形をとり始めた。