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雑兵から竪琴の音色が聞こえた方向を教わり、瞬とアイザックはその方角に向かって歩いていた。 白銀聖闘士たちの復活で聖域の町はやや混乱状態ではあるが、魔鈴や邪武たちが指揮をとっていたので、神官や女官達は落ち着いて指示に従っている。 ただ、魔鈴から気になる話を聞いた。 シャイナとジュネの姿が見えないというのだ。 (ジュネさん……、アンドロメダ島へ戻ったのかな? もう少し待っていてくれたら逢えたのに) そう考えると、逆に彼女に会いたい気持ちが募る。 その時、瞬の耳にフルートの音色が飛び込んできた。 「目的の人物は琴座だが……」 何か間違えているのではと、アイザックは考えてしまう。 「誰だろう??」 瞬も首を傾げた。 フルートと聞くと海将軍のセイレーンを思い出すが、彼がオルフェと一緒にいるとは考えにくい。 二人は急ぐ為に、駆け足になった。 ソレントの演奏に、オルフェとダイダロスは茫然としている。 「彼は何者なんだ……」 オルフェはダイダロスに問う。 だが、彼も偶然出会った聖域の客人だとしか考えていない。 「判らない……。 だが、この曲はお前がよくユリティースに聞かせていたモノだろう」 二人の聖闘士の反応をジュリアンは楽しそうに見ており、イオは背筋に冷たいものを感じた。 (セイレーンのヤツ。何かヤバイ選曲したんじゃないのか……) その時、彼らの背後で人の声が聞こえ、演奏は一時中断された。 「ダイダロス先生!」 瞬が自分の師匠の姿を見つけて駆け寄ってきたのである。 「瞬!」 ダイダロスは突然現れた弟子の姿に茫然とした。 瞬はそのままダイダロスに抱きつく。 「アンドロメダ!」 イオは過去に対決した事のある少年の登場に、どう反応して良いのか判らない。 少し離れたところには、アイザックがいた。 イオとソレントは慌ててジュリアンの方を見る。 「ジュリアン様、宿屋へ戻りましょう! 女将も心配していると思います」 ソレントはフルートを素早くケースに仕舞うと、ジュリアンの腕を掴んで、そのまま走り去った。 「あっ、待ってくれ!」 オルフェがソレントを引き止めようとした時、イオが彼の前に立つ。 「すまないが、話は後にしてくれ! 後で彼と話が出来るように説得する」 ジュリアンにソレントの正体を知られる訳にはいかないので、イオは必死である。 「イオ……、何でここにいるの??」 瞬はようやくイオの存在に気がつく。 「アンドロメダ!ジュリアン様は何も知らないんだ。 後は頼む!」 彼はそう言って、そのままジュリアンの後を追った。 「後は頼むって、僕だって何が何だか判らないよ」 確かにその通りである。 |