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エリスの気配が消え、十二宮前の広場は再び静かになる。 「カノン! 俺はパンドラ様を連れて、このまま城に戻る」 ラダマンティスはカノンの返事も聞かずに聖域の夜空へと飛び去って行った。 直ぐに冥闘士とパンドラの姿は闇に溶けて見えなくなる。 そして氷河は光の膜に包まれた恋人の顔を見ていた。 「氷河、絵梨衣さんを安全な所へ連れて行こう」 瞬に言われて、氷河は無表情なまま頷く。 氷の世界にいると言われたが、夢の中で見た場所の事だろうか。 だが、自分の移動能力には限界がある。そして師カミュの事も心配だった。 その時、誰かが氷河の肩を叩く。 「キグナス。この娘さんは社殿へ連れて行きなさい。 十二宮近くでは何が起こるか判りません。向こうで女官たちに依頼するのです。 とにかく、我が師シオンには私から事情を話しておきます。 この場合はあの方の指示を仰ぐべきでしょう」 ムウの言葉にシュラとカノンは頷いた。 この聖域で三百年近く教皇職にいた男。 確かにこの混乱した状態には、彼のような経験豊富な存在は頼りになる。 その時、アイザックが瞬に向かって話しかけた。 「すまないが、誰か琴座のオルフェという者を知っている人はいるか?」 話しかけられて、瞬は驚いた。 「何でその人の名を知っているの?」 「……エリスから伝言を頼まれている。 直接届けたいから、知っているのなら案内して欲しい」 アイザックの頼みに、瞬は一輝たちの方を見た。 (ここで身動きが取れるのは多分、僕だけだ) 黄金聖闘士たちは別の任務に付くだろうし、仲間でオルフェを知っているのは星矢と自分だけ。 そして星矢はあまり無理の出来ない身体である。 「それじゃぁ、僕が案内するよ」 何処に居るかは判らないが、聖闘士たちが復活しているのだ。 誰かが知っているかもしれない。 オルフェと自分の師匠,そして消息の判らないジュネの事を……。 「宜しく頼む」 アイザックは氷河の方を見た後、十二宮前の広場の階段を降り始めた。 「星矢、紫龍。兄さんを見張っていてよ」 瞬にそう言われた時、二人は (止められるわけ無いだろ……) と、心の中で呟いていた。 一輝に至っては直ぐさまデスクィーン島へ行きたかった。 だが、アルデバランから 『傷ついた身体で敵地へ飛び込めば、アンドロメダもきっとお前を助けに行くだろう。 だが、今度の敵は目的が判らない。迂闊なことをすれば犠牲者が増えるだけだ』 と、説得されている。 自分の問題に弟を巻き込むのは本意ではない。 だが、身体が少しでも回復したら、直ぐにでもデスクィーン島へ行くつもりだった。 そして瞬たちとは入れ代わりに、アルデバランが広場へと戻ってきた。 |