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感情が色で示されるというのなら、この複雑で禍々しい色彩は何と言えばよいのか。 |
誰かが自分を呼ぶ声に、彼は意識を取り戻した。 彼はその声の主の名を呼ぶ。 この時彼は自分が捕らえられている事に気がついた。 「アイオロス!」 しかし、周囲の闇が自分を拘束していて、彼は動く事が出来ない。 『デスマスク……。気がついたようだな……』 「アイオロス!何処にいる!」 蟹座のデスマスクはアイオロスの声があまり鮮明に聞こえない事に、嫌な予感がした。 『デスマスク。時間がない。 サガに構わずに、急いで聖域へ戻れ。 そしてエリスを味方に付けるんだ……』 アイオロスの真意が判らず、デスマスクは怒鳴った。 「何言っているんだ。 あんな女神を味方にしてどうするんだ!」 『彼女の協力が無くては、サガを助け出す事は出来ない。 彼はサガの命がどうなろうと、構わないのだから……』 アイオロスの言葉に、デスマスクは沈黙した。 それは、彼自身が薄々感じていた事だったからである。 考えたくもないが自分の技ではあの男を止められないのは、サガの中に潜む者は死というものを超えているような気がしていたからだ。 不死と言えば一番しっくりくるが、人間が不死なわけがない。 (俺の技が通じた時は、きっとあの男がサガを処分する時だけだ) デスマスクは再び身体を動かそうとする。 「判った。アイオロスがあの性悪女神を必要だと言うのなら、止めはしない。 女の趣味は人それぞれだ」 その瞬間、デスマスクの真横を、金色の光が通り抜けた。 黄金の矢は彼の真横に深々と突き刺さり、そして消滅。 『強引な曲解はするな。急いで聖域へ行け!』 デスマスクは自分の身体を拘束していたモノにヒビが入った事に気がついた。 黄金の矢が、亀裂を作ってくれたのである。 何にしてもこんなチャンスは二度とない。 彼は体中に力を込める。 亀裂は徐々に大きくなっていった。 |