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離愁 4

シャイナはデスクィーン島の様子を注意深く観察した。
先程、この付近で恐ろしいまでの力のぶつかり合いと、その消滅を感じたからである。
だが、島は夜の闇に包まれており、不気味なくらい何の気配も感じられなかった。
(まさかこんな所にサガがいるのか?)
彼女は昨夜から仇を求めて、動き続けていた。 聖域に戻る訳にはいかない。
自分の行動を他の聖闘士に気づかれて止められたら、チャンスを逃すからだ。
(あの子の仇を討つ為にあたしが私闘をしようとしている。 本当に聖闘士失格だな……)
弟子を死に追いやってしまった自責の念。
それは決して癒える事の無い傷となって、彼女の心に痛みを与え続けていた。


シャイナは星矢がアテナを守り通した事を知らされた時、純粋に無事である事を喜んだ。
だが、その裏でカシオスの死があった事を知らされた時、気がおかしくなりかけた。
何故、カシオスが死ななくてはならない。星矢の為に死ぬのは自分だったはず。
だが、どれ程自分を責めても、時既に遅し。 大事な弟子は、もう自分の傍には居てくれないのである。
誰かが聖闘士では無いカシオスを、聖闘士の墓場に埋葬するよう働きかけたと聞かされた。
そして彼女は歴代の聖闘士たちの眠る墓場に行く。
しかし心が凍りついていて、涙は出ない。
そんなある日、カシオスの墓の前に一人の男性が立っていた。
聖衣を装着していなかったが、シャイナはその男性が蠍座のミロである事は知っていた。
「ミロ……」
「いい闘士に育てたな。シャイナ」
彼はそう言って墓から立ち去った。
交わした言葉はそれだけだったが、この一言に彼女はようやっとカシオスの為に泣く事が出来た。
(カシオス……。黄金聖闘士のミロが、あんたの事褒めてくれたよ……)
ペガサスの聖闘士にはなれなかったけど、彼もまたアテナを守る闘士の一人なのだと認められたようで、シャイナはその場で静かに泣いた。
そしてその日から、彼女の心の痛みは少しずつ変化し始めた。

(ヤツは絶対にここにいる筈なんだ!)
しかし、島は物音一つせず、何らかの動きも見えない。
だが、彼女はその研ぎ澄まされた感覚で、何かが闇に潜んでいることに気がつく。
(何かがいる?)
シャイナの背後で光りが起こった。彼女は咄嗟に背後を振り返る。
(巨人!?)
それは白い気の様なモノを発しながら、無表情にシャイナに向かって拳を振り上げていた。