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神代の夢 3

光は春麗の身体を包み込む。
そして不思議な浮遊感覚の後、動きが止まった。
彼女は恐る恐る目を開けた。
「……ここは……」
目の前に広がるのは川の中よりも深い青の水世界。彼女は慌てて自分の呼吸を確かめたが、別に息苦しくは無かった。
そして大きな部屋の中で、一人の女性が泣いていた。
「精霊さん!」
五老峰に居る筈の女性が、何故この場所で泣いているのかが判らない。
でも、こちらの女性の方がずっと大人びているので、もしかしたら別人かと思わない事もない。
「精霊さん、何か思い出したのですか?」
春麗は彼女の肩に触れようとして、そのまま転びそうになってしまった。
彼女は女性に触れなかったのである。
(夢だから??)
彼女は自分の右手をじっと見た。
その時、部屋に誰かが入ってきた。
「ここにいたのか!」
背後の声に、春麗は飛び上がらんばかりに驚く。
「あっ……」
振り返ってみると、何処か険のある厳しい顔だちの女性が立っていた。
彼女は春麗を無視して、精霊に似た女性の肩を強引に揺すった。
「いくら泣いても、あの子はもうここへは戻っては来ない」
すると彼女は涙ながらに女性を睨み付ける。
春麗は自分の存在を無視されているので、二人には自分は見えないのだと思っていた。
だが、二人は何に気がついたのか、じっと自分の事を見ているのである。
彼女は心臓が早鐘を打っているのが判った。
「お前は何処から来た」
そう言って厳しい顔だちの女性は、困惑している春麗に自分の顔を近づけた。
春麗の方はどう答えて良いのか判らない。
(光を見た後ここに居ましたって言って、信じてくれるかしら??)
しかし、女性の方は何かに気がついたらしく、急に楽しそうな笑みを浮かべる。
「お前、違う世界から来たな」
的を得た言葉に、春麗は頷く。
女性は春麗の頭上に手をかざした。
空気の流れを感じて、春麗は自分が実体化出来た事を知った。