人に恐怖と混乱を与える闇もあれば、優しい眠りを与える闇もある。 ここ五老峰では、静かな時間が流れていた。
だが、散歩から戻って再び眠りについた春麗は、しばらくして自然に目が覚めてしまった。 (……) 明日になればエウリュディケーが来るのだから、是非とも一緒に食事をしてもらいたい。 その為には早起きして食事の準備をしたいから、今はちゃんと眠っておきたいのだが、どうしても眠れない。
何か不吉な予感めいたものが自分の心に沸き上がって、目が冴えてしまったのである。 (まさか、紫龍や老師に何かあったんじゃ……) 心が痛みを訴え、春麗は涙が零れそうになる。
その時、何か砂のようなモノがぶつかり合う音が聞こえてきた。 彼女は再び起き上がる。 隣を見てみると、貴鬼は熟睡していた。 起きる気配はない。
(起こしちゃ可哀相ね) 彼女は再び上着を羽織ると静かに部屋を出る。 音は自分の部屋から聞こえていた。 (もしかして精霊さんが起きたのかしら?)
春麗が部屋を覗いてみると、いきなり七色の光が濁流の如く部屋から溢れだしたのである。 |