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宿命 4

彼は白羊宮、金牛宮を突破する。
(守護宮の造りがどこか古めかしいのは、多分一番最初の聖域をモデルにしている所為だな)
誰もいない無人宮を突破するのはたやすい。
しかし、彼は走りながらも、敵が出てこないかと周囲を警戒することは忘れなかった。
自分の身体にまとわりつく妖気が段々と増えていく。
(彼は何処にいるんだ!双児宮か?それとも神殿か?)
走りながらも脳裏に、親友と過ごした昔の事が思い出された。
サガは親友だと今でも言える。
カノンに関しては、聖域に馴染めなかったように見えた。
それが何故なのか当時は判らなかったが、今ならなんとなく理解できる。
(多分、カノンには聖域という世界は狭すぎるのだろう。そして、兄のサガが力を持ちながら自分を殺し続けている事に嫌気がさしたのかもしれない)
アイオロスの前に双児宮が見えてきた。
(アイオリアも、俺の弟じゃなかったら良かったのにな……。
そうすれば逆賊の弟などと言われずに、輝かしい獅子として皆から愛されただろう)
そう思った瞬間、彼は思わず走りながら苦笑した。
(駄目だ!アイオリアの事を考えると、俺も冷静さを欠く……)
権力に屈した聖域が自分の弟にした事を、彼はまだ誰からも聞いていない。 だが、だいたいの予想はつく。
(すまない……アイオリア)
彼が双児宮の入り口に辿り着いた時、身体にまとわりついていた黒い妖気が離れた。
「……」
そして目の前には黒い闘衣をまとったサガが立っていた。
「射手座。この場所に一人で来るとは良い度胸だ」
彼は楽しそうに笑う。
その表情が自分の親友と同じ笑みな事に、アイオロスは苛立ちを感じた。
「サガを返してもらいに来ました。 ポリュデウケース殿」
アイオロスの口からでた言葉に、彼はその表情を凍らせる。
「貴様、何故その名を知っている」
「……」
しかし、アイオロスは返事をしない。 既に彼は戦闘状態に突入していたのである。
会話で気をそらしたり、動揺すれば勝負は簡単についてしまう。
その時、ポリュデウケースは何かに気づいたらしく、楽しそうに笑った。
「そうか……、お前は本物の射手座だったな。
我が師ケイローンから、予言の力を得ていたのか?
だったら、私の存在を親友に伝えたか?」
アイオロスはその瞬間、必殺技を彼に向かって放っていた。