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宿命 3

暗黒の世界の神殿。
その玉座に腰掛け、彼は予想外の事態に驚いていた。
(神代の頃は敵同士で、決して相容れなかった冥闘士が黄金聖闘士を助け出すとは……)
彼は自分の計画に綻びが出てきた事に気づく。 時代は確実に変わろうとしている。
聖・海・冥の闘士たちは、たとえ細い糸の様な繋がりでも、それを断ち切る気がない。
いずれその繋がりは、天上界を脅かす。
敵対することでバランスを取っていた者達が手を組んだとあっては、その力は計り知れないからだ。
(……過去の支配者たちは人間によって粛清されるか、それとも迎合するしかない)
ほとんど光のない空間に彼の左手に淡い光が灯る。
海辺の神殿にてテティスやアイオロスたちを攻撃した後、彼の手には不思議な光がまとわりついていた。
常に見えているわけではないが、今のように敵のいない状態だと数秒間その手に現れるのである。
青白い光が、彼の端正な顔を照らす。
だが、その眼差しには何の表情も表れない。
彼はしばらくその光を見つめたが、闇が蠢いた気配でその光は姿を消した。
(まぁいい。時間はたっぷりとある)
彼は冷たい笑みを浮かべた。

その黒い世界に立った時、アイオロスはその空間に渦巻く妖気に少し驚いた。
射手座の聖衣はそんな混沌の中でも美しい光を放っている
(……多分、俺は勝てないだろう)
彼のいる場所から、眼下に黒い霧の漂う空間は、まるで地上の聖域のようだった。
建物が妖しく黒光りしている。
その時、彼は誰かの視線を感じた。
(もう、向こうにはバレたようだ)
この世界の主はサガの中に潜んでいた邪悪な意識。 そこにやってきたという事は、この世界の神に逆らう事かもしれない。
アイオロスは一筋の光となって、黒き十二宮へと向かう。