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宿命 1

地上への道はまだ続いていた。
しかし、エウリュディケーが用意した道なので、どんなに長くても沙織たちに不安は無かった。
「ねぇ、エリス。 エリスの望みって何なの?」
沙織はエリスの服を掴んで、引っ張る。
「そうだな……、二人には言っておいても良いかもしれないな。
私がレーテーの水を飲んでいた場合、お前たちが騒いでくれれば、ムネーモシュネーの水を飲もうと考えるかもしれない」
それを聞いて、パンドラの表情が明るくなる。
「レーテーの水を飲んでも、ムネーモシュネーの水を飲めば平気なのか?」
尋ねられて、沙織は頷く。
「手に入れられるかどうか判らないけど、とにかく大丈夫な筈よ。ただ、自分たちがレーテーの水の所為で忘れているという事すら、忘れている可能性があるけど……」
「お前たちが忘れていたら、私が持ってきてやろう。 せっかく一緒にヘカテ様の試練を受けたんだ。
忘れ去られて共有する者がいないのは残念だからな」
エリスの言葉にパンドラは素直に喜んだ。
沙織は経験上、ちょっと嫌な予感がした。
「エリス。私たちに是非とも騒いで欲しいと思っているでしょ」
彼女は争いの女神の顔を覗き込む。
「その通りだ。私には忘れてはいけない目的がある」
彼女は真剣な眼差しで、沙織を見た。 怖いくらいに人の心を突き刺す様な鋭さがあった。
「……いったいそれは何なの?」
沙織の心臓は早鐘を打っている。
二人の間に流れる緊張を、パンドラは感じた。
海将軍たちを、タルタロスへ落とす。 それが私の望みだった」
エリスの表情に現れた殺意に、沙織とパンドラはその場から動く事が出来なかった。