自分が目を開けていることすら疑わしい程の深い闇。 瞬は崩壊する冥界にいた筈なのに、頭上に光を見た直後、真っ暗な空間にいた。
どれくらいその場所にいたのかも判らないくらい、彼はその場から動けずにいた。 (兄さんや皆は無事かなぁ……) 自分達が守り通した女神の事も心配だが、何故か彼女は大丈夫なような気がした。
だが、その止まってしまったかの様な時間は、驚くべき存在の声によって動き始める。
『そこにいるのは、誰だ』 闇の中に響いた声を聞いた時、瞬は咄嗟にチェーンを握りしめる。
(冥王ハーデス!) しかし、肝心のハーデスが何処にいるのか判らない。 瞬は全神経を集中させて、これから来るであろうハーデスの攻撃に備えたが、闇は動く気配を見せなかった。
(?) 『アンドロメダか……』 ハーデスの口調からは、戦闘中の様なギスギスした雰囲気は感じられない。 逆に瞬の方が焦ってしまった。
(何??) 瞬が辺りを見回すと、一ヶ所だけ小さな光が点滅している場所があった。 彼はゆっくりとその光の元へ歩きはじめた。 これは何かの囮で、この闇の中に何らかの罠が仕掛けられていると考えたからである。
しかし、それらしい罠に掛かる事無く瞬は光の前に立った。 『その光を掴め』 逆らった所で状況が好転するはずが無いと思ったので、瞬は言われた通りに光を両手で掴んだ。
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