エウリュディケーに別れを告げて、三人は地上を目指した。 階段だったのは途中までで、それから上の方はゆるやかな上り坂だった。
パンドラは自分の中の恐怖に、だんだんと足どりが重くなる。 「どうしたの?パンドラ」 沙織に話しかけられて、パンドラは怯えた小動物のように身体を強張らせた。
「パンドラ。地上に着いたら、どうなるか判らないんだ。 アテナに言いたいことがあったら、言っておけ」 エリスはその場に立ち止まった。 沙織もパンドラも立ち止まる。
「ア……アテナ、聞いて欲しいことがある」 彼女は緊張のあまり、顔が固くなっていた。 「ユリティースの事なんだが……」 パンドラがようやっとその一言を言った時、沙織は彼女の両手を自分の両手で握った。
「……」 驚くパンドラ。 沙織は優しい笑みで、パンドラの事を見た。 「エウリュディケーがもう許しているんだもの。お願いだからそんなに自分を責めないで…。
それにもうパンドラは昔のパンドラじゃないわ。 私、貴女が彼女をオルフェに逢わせたいって願って頑張っている姿を、ずっと見ていたのよ」 沙織から伝わる手の温かさに、パンドラはまた涙が零れそうになっている事に気がついた。
「さぁ、地上を目指しましょう」 沙織に促されて、パンドラは再び歩きだす。 彼女の腰に装備されている短剣が、ほんの少し光った。 |