実は今、聖域中が聖闘士たちの復活で、てんやわんやの大騒動の真っ最中だった。 聖闘士の墓場に七色の光が広がった時、聖域の警備をしていた大熊星座の檄は敵襲と思った。
多分、最初に光の中から現れたのが矢座のトレミーでなかったら、彼はそのまま自分の必殺技をその人物に使っていたかもしれない。 奇しくもトレミーは星矢たちに一番に倒されてその場に転がされていた為、檄は彼の顔を見知っていた。 「聖闘士たちの復活が始まった……」
檄は雑兵たちに命じて、光から出てきた聖闘士たちを安全な場所へ連れて行く様に命じる。 次々と現れた聖闘士たちは、ほとんどが聖衣は元に戻っているが身体は傷だらけだった。
「檄!何が起きたんだ」 狼星座の那智と子獅子星座の蛮が駆けつける。 「星矢たちに倒された白銀聖闘士たちが復活したんだ。 魔鈴さんかシャイナさんを呼んで来い」
「判った!」 蛮がその場を離れる。 そして、彼らの復活は墓場以外でも起こっていた。
夜だというのに聖域のあちらこちらで光が発生するので、宿屋へ戻る道すがらジュリアンは楽しそうに周りの様子を見ていた。
「今日はお祭りがあるみたいだね」 多分、本気でそう思っているのだろう。 ジュリアンに話しかけられて、イオはどう答えようか迷った。 「お祭りではないと思いますよ。それよりジュリアン様、あまり勝手に出歩かれると、こっちが慌ててしまいます」
ソレントが慣れた対応をする。イオは思わず感心してしまった。 「セイレーン、ポセ……ジュリアン様はいつもこんな調子なのか?」 鱗衣を装着したままのイオを紹介する時、ソレントは彼を
『この土地の方が、彼を護衛兼案内役に付けてくれました』 と言ったのを、ジュリアンは疑いもせずに喜んだのである。 「ポセイドン様であった時の事は覚えていないのですから、スキュラもあの方をジュリアン様として扱って下さいよ」
「それは判っている」 しかし、この警戒心の薄さは、本当に海運王と呼ばれたソロ家の跡取り息子なのかと疑いたくなる。 ソレントとイオが小声で会話していると、前を歩いていたジュリアンがいきなり振り返った。
「ところでイオは、ここの闘士の人とは違う鎧だけど、何か立場が違うのかな?」 いきなりスルドイ事を尋ねられて、二人は心臓が止まるかと思う程驚く。
「ジ、ジュリアン様??」 これにはソレントも即答出来ずに戸惑ってしまった。 「あっ、俺は海管轄なんです!!」 当たってはいるが、イオは何か物凄い嘘を言っているような気がした。
「海ですか。それなら、もし良かったら明日海の周辺を案内してくれませんか?」 「……良いですよ。何処がいいですか?」 話が変わったので、二人はほっと胸をなで下ろす。
だが本当の衝撃はこの後にやって来たのだった。 |