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海将軍に至っては、毒気を抜かれたような顔をしている。 再びソレントが現れる。 「とにかく、私はジュリアン様と宿屋に戻ります。 誰か一緒に来てください。 また、ジュリアン様に居なくなられたら、大事です!」 場所が場所だけに、非常に説得力があった。海将軍たちは不満を感じながらも、ここが引き時だと判断したらしい。バイアンがカノンから離れた。 だが、アイザックが割り切れない気持ちを抱えているのを見たクリシュナが、彼に声をかけた。 「クラーケンはシードラゴンに付いていろ。何かあったら我々に連絡をするんだ。 スキュラはセイレーンと一緒に行ってくれ」 「判った」 イオはソレントと一緒に部屋から出て行く。 「俺は海底神殿へ行って様子を見てくる」 その意見に、バイアンは直ぐに賛成した。 「俺も行こう。 クラーケンは、あの男を殴るチャンスがあったら、殴っておいてくれ。 それから、テティスは俺たちの方でも探す。これに関しては聖域に文句は言わせない」 許した訳ではないが、今は邪魔はしないという意思表示らしい。 「シードラゴン。これは貸しだ」 そう言ってカーサは、さっさと部屋から出ていった。その後をバイアンとクリシュナが立ち去る。 「……すまない。皆……」 カノンは涙を堪える。 今度の一件で海界と再び戦いになっても仕方ないのに、またもや仲間たちは自分を信じてくれたのだ。 「何とか最悪の事態は回避出来たようだな。 海皇はよくぞあれだけの男たちを見つけた」 最優先事項の為には、個人的な感情を保留にする。 シオンは詳しい事は判らなかったが、海闘士たちに好感を持った。 「ところでようやく落ち着いた所で、何がこの聖域に起こっているのだ?」 シオンに聞かれて、ムウはカノンの方を見た。 すると彼は、 「ムウ、すまないが俺はデスクィーン島へ行ってくる。 アイオロスを連れ戻したいし、向こうで何があったのかこの目で見たい」 と言って部屋を出ようとする。 「それじゃぁ、俺も……」 アイザックが動こうとしたが、カノンはそれを止めた。 「クラーケンはムウからこの二日間の話を聞いていてくれ。 詳しい事が判らなければ、到底シーホースたちも納得できないだろう」 そして彼は部屋を出て行ったのだった。 自分で説明すれば良いのにとアイザックは思ったが、この時彼はある事に気がつく。 (もしかして、シードラゴンはあの男と相討ち覚悟なのでは……) シードラゴンは簡単に死ぬような男ではないと思ってはいるが、相手が悪すぎるという気もする。 そしてアルデバランの方では、アイオロスが神殿へやって来たタイミングが良すぎる事に疑問を感じていた。 まるで何かを予測していたのかの様な行動と言葉。 (アイオロスは、サガが少女たちを攻撃しに来た事を知っていたのではないのか?) だが、ただ単に危険場所から彼女たちを避難させたかったのかもしれない。 どちらにしても断言するだけの判断材料がない為、彼はその事を言う気はなかった。 「サガが何かしたようだな」 いきなり師匠の核心をつく質問に、ムウは背筋に冷たいモノを感じた。 「はい……。実は……」 正直言って、この中で一番状況説明に時間がかかりそうなのが、自分の師匠だった。 |