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試練終了 5

仲間たちの小宇宙を感じなくなった時、カノンはがっくりと床に膝を着いた。
「馬鹿野郎……」
俯いて顔をムウに見られない様にしてはいたが、声が震えてしまう。
「カノン。彼らが来ましたよ」
ムウの言葉に、カノンは顔を上げた。 複数の足音が聞こえてくる。
「ムウ!」
アイオロスたちが海辺から駆けつけて来たのである。
彼の背後からアルデバランと五人の海将軍たちも姿を見せた。
「サガは今何処にいるんだ!」
アイオロスはムウの肩を掴んで揺さぶった。
「サ、サガはデスクィーン島の……」
ムウがそう言った途端、彼は部屋を飛び出した。
「アイオロス!」
追いかけようとした時、入れ代わりに別の男性が部屋に入ってきた。
「あれはアイオロスではないのか?」
ムウは絶句する。
目の前に、若い姿の師匠。前教皇のシオンが立っていたからである。
「ムウ、もしかしてそこにいる者たちは海闘士か?」
「……そうです。 今は訳あって休戦状態です」
弟子の言葉に、彼は疑わしそうな眼差しでカノンの方を向いた。
「カノンが詰め寄られている気がするが?」
今、カノンは双子座の黄金聖衣をまとっている。 一見すると確かに海闘士たちが殺気だっている為、休戦という言葉を信じて良いのか迷う。
実際、海将軍たちはカノンを取り囲んでいた。
「シードラゴン!あの男はどうした!」
バイアンがカノンを無理矢理立たせて詰め寄る。
「テティスはいったいどうなったんだ! 答えろ、シードラゴン」
アイザックも彼に詰め寄った。
疑問は尤もだが、そっちの方はカノン自身が聞きたいくらいである。
「テティスはもう一人の少女と共に行方不明だ。 今、聖域でも探している。
お前たちを攻撃した双子座のサガは、アテナが黄金聖闘士たちに捕獲命令を出した」
そしてカノンは逆にバイアンの肩を掴む。
「頼む!これは聖域の問題として、こっちに任せてくれ」
しかし、そう簡単に引き下がれるわけがない。
「シードラゴン。我々は海を守護する海将軍だ。
ここまでコケにされたら、ポセイドン様の配下として引き下がるわけにはいかない」
神の闘士として真っ当な事を言われて、カノンは絶望的な気持ちになった。
これでは、再び戦乱が始まってしまうからである。 そこへもう一つの足音が宮に響いた。
「シードラゴン、いますか!」
普段着のソレントが駆け込んで来たのである。
「セイレーン!無事だったのか」 クリシュナが彼の方へ近付いた。
「皆、アルデバランさん!復活出来たんですね」
彼は一瞬喜んだが、直ぐに慌てた表情になる。
「大変なんです。ジュリアン様が居なくなられたのです」
これにはシオン以外の闘士たちが、色々な意味で驚いた。
「どういう事だ! 何でジュリアン様がここにいるんだ! 今はポセイドン様なのか??」
カーサの意見は尤もである。
「ああもう、理由を話すと長くなります。 とにかくジュリアン様を一緒に探してください。
シードラゴン、あなたはどうしますか?」
海将軍たちの視線がカノンに集中する。
そこへ遠くからぽやぽやした青年の声がした。
「誰かいますか?」
その声を聞いた瞬間、またシオン以外の全員の背筋が冷たくなった。
「ジュリアン様だ!」
ソレントは慌てて部屋を出る。
「何で十二宮へポセイドンの依代が来るんですか! 雑兵たちは何をやっている!!」
ムウは何が何だか判らなくなりそうだった。カノンも同じ気持ちである。