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仲間たちの小宇宙を感じなくなった時、カノンはがっくりと床に膝を着いた。 「馬鹿野郎……」 俯いて顔をムウに見られない様にしてはいたが、声が震えてしまう。 「カノン。彼らが来ましたよ」 ムウの言葉に、カノンは顔を上げた。 複数の足音が聞こえてくる。 「ムウ!」 アイオロスたちが海辺から駆けつけて来たのである。 彼の背後からアルデバランと五人の海将軍たちも姿を見せた。 「サガは今何処にいるんだ!」 アイオロスはムウの肩を掴んで揺さぶった。 「サ、サガはデスクィーン島の……」 ムウがそう言った途端、彼は部屋を飛び出した。 「アイオロス!」 追いかけようとした時、入れ代わりに別の男性が部屋に入ってきた。 「あれはアイオロスではないのか?」 ムウは絶句する。 目の前に、若い姿の師匠。前教皇のシオンが立っていたからである。 「ムウ、もしかしてそこにいる者たちは海闘士か?」 「……そうです。 今は訳あって休戦状態です」 弟子の言葉に、彼は疑わしそうな眼差しでカノンの方を向いた。 「カノンが詰め寄られている気がするが?」 今、カノンは双子座の黄金聖衣をまとっている。 一見すると確かに海闘士たちが殺気だっている為、休戦という言葉を信じて良いのか迷う。 実際、海将軍たちはカノンを取り囲んでいた。 「シードラゴン!あの男はどうした!」 バイアンがカノンを無理矢理立たせて詰め寄る。 「テティスはいったいどうなったんだ! 答えろ、シードラゴン」 アイザックも彼に詰め寄った。 疑問は尤もだが、そっちの方はカノン自身が聞きたいくらいである。 「テティスはもう一人の少女と共に行方不明だ。 今、聖域でも探している。 お前たちを攻撃した双子座のサガは、アテナが黄金聖闘士たちに捕獲命令を出した」 そしてカノンは逆にバイアンの肩を掴む。 「頼む!これは聖域の問題として、こっちに任せてくれ」 しかし、そう簡単に引き下がれるわけがない。 「シードラゴン。我々は海を守護する海将軍だ。 ここまでコケにされたら、ポセイドン様の配下として引き下がるわけにはいかない」 神の闘士として真っ当な事を言われて、カノンは絶望的な気持ちになった。 これでは、再び戦乱が始まってしまうからである。 そこへもう一つの足音が宮に響いた。 「シードラゴン、いますか!」 普段着のソレントが駆け込んで来たのである。 「セイレーン!無事だったのか」 クリシュナが彼の方へ近付いた。 「皆、アルデバランさん!復活出来たんですね」 彼は一瞬喜んだが、直ぐに慌てた表情になる。 「大変なんです。ジュリアン様が居なくなられたのです」 これにはシオン以外の闘士たちが、色々な意味で驚いた。 「どういう事だ! 何でジュリアン様がここにいるんだ! 今はポセイドン様なのか??」 カーサの意見は尤もである。 「ああもう、理由を話すと長くなります。 とにかくジュリアン様を一緒に探してください。 シードラゴン、あなたはどうしますか?」 海将軍たちの視線がカノンに集中する。 そこへ遠くからぽやぽやした青年の声がした。 「誰かいますか?」 その声を聞いた瞬間、またシオン以外の全員の背筋が冷たくなった。 「ジュリアン様だ!」 ソレントは慌てて部屋を出る。 「何で十二宮へポセイドンの依代が来るんですか! 雑兵たちは何をやっている!!」 ムウは何が何だか判らなくなりそうだった。カノンも同じ気持ちである。 |