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壁をくぐると、そこには三つの細い道が延びている。 そして背後の穴は塞がれて、もう戻れなくなっていた。 (泉に辿り着くまでは、ここから出られないと言うことね) ならば前進するのみ。 沙織は直感的に真ん中の道を選んだ。 (あらっ??) 道を進んで行くうちに、足元の感触がどうも変化している気がした。 「これは……砂?」 先程まで岩肌を歩いていたのだが、今は砂場を歩いているた。 そして何処からか波の音も聞こえてきた。 しかし、自分の視野に海も目的地の泉も見えない。砂で表された道が一本、延びているだけである。 (まさか、この道は断崖絶壁に続いているのかしら?) だからと言って、道がそれしかないのなら進まなくてはならない。 「どんな道だろうが、私は進んで見せるわ!」 誰が聞いているというわけでもないが、決意を固める為に彼女は言葉を口にした。 (!) すると目の前に、小さな泉が現れた。 暗闇の中で見ている為、泉は光を零しているかのようだった。 「本当に、ユリティースは何もやっていないんだな!」 パンドラがエウリュディケーとエリスの待つ部屋に辿り着いた時、まず確認したのは懲罰の鎧の色だった。 「はい。私は何もしていません。 それは女神エリスもご存じのはずです」 だが、最初の試練終了後よりも鎧は赤みを増しているので、正直言ってエウリュディケーの言葉は信用仕切れない。 彼女は同意を求めるかのように、エリスの方を向いた。 「エウリュディケーの言う通りだ。彼女はずっと私と話をしていたぞ」 そう言われると、エリスが傍にいてエウリュディケーの行動を止めないのも変だと思えたので、彼女は一応納得することにした。 「心配してくださったのですか?」 エウリュディケーは嬉しそうに微笑む。その優しい笑みに、パンドラの胸は痛んだ。 そして、その痛みに苛立ちを感じて、彼女の口調が少々荒くなる。 「当たり前だ!お前を絶対にオルフェに会わせると、言ったはずだぞ」 八つ当たりみたいな会話に、エリスは思わず苦笑した。 そこへ沙織が部屋のドアを開けて入ってきた。 |