INDEX

呼び声 5

聖域の方では童虎が決断を迫られていた。
デスマスクからの情報で、サガは黄金聖闘士たちを一人ずつ呼び出している事が判ったからである。
彼らは白羊宮にて、緊急会議を開いた。 だが、沙織の勅命を受けた黄金聖闘士たちのうち、本来いるべきアイオリアとカミュが姿を見せない。
「正直言って、俺の技ではアレは捕まえきれない」
デスマスクは自分の技が、今のサガに通じない事はよく判っていた。
「確かに雑念の多いあなたでは、技を使う前にやられるのがオチでしょう」
シャカの言葉をデスマスクは強引に聞き流す事にした。隣でシュラが『騒いだら使うぞ!』と、物凄い形相で二人を睨み付けてながら右手を構えていたからである。
シュラは今回の一件で、かなり気が立っている。彼はアイオロスとロクに話をしていない。
そして立て続けに起こる出来事に振り回されて、自分に対して気持ちの整理が出来ていないのである。
「多分、アイオリアとカミュは一人で捕らえようとしたのでしょう」
ムウの言葉にミロが怒鳴る。
「ならば今度は俺が奴にスカーレットニードルをかけてやる!」
「いきなり必殺技か……。だが、それ位の事をしないと、あいつを止められないだろうな」
アフロディーテは持っているバラを手で弄ぶ。
「ならば俺が行く。ここで待つのは、もう限界だ」
だが、カノンの意見は全員に即却下された。
「奴はきっと、おぬしを真っ先に潰しにかかる。 サガの意識を完全に抹殺する為に、実の弟を葬るところを見せるだろう。今は辛くとも堪えるんじゃ」
童虎は諭す様に告げた。
「しかし! それなら俺を囮にすれば良いだろう」
カノンが叫んだ時、彼の後頭部をデスマスクとシャカが叩いた。
「馬鹿かてめぇは」
「老師、このような愚か者と会話をしても無駄です。 カノン、天舞宝輪をかけておくから少し頭を働かせておく様に」
「おい、シャカ。お前がカノンを葬ってどうするんだ」
シュラはこの間抜けな会話に、聖剣エクスカリバーを使うタイミングを逃した。
「何だ、お前ら!」
カノンは後頭部を押さえる。二人の黄金聖闘士たちは、彼を力一杯殴ったらしい。
「いや……、ワシも廬山百龍覇を使うところじゃった」
童虎が過激な発言をする。
「カノン。肉体はアテナが試練を終了させれば復活できるじゃろうが、抹殺された精神はいくらなんでも管轄外じゃろう。アテナもそれを心配しておるから、おぬしに後方支援の役目を与えたんじゃ。
今は、サガの為に堪えろ。 何かしらサガを救う手がかりを見つけたら、今度はしっかり働いてもらう。
心配するな」
聖闘士の要と呼ばれる男の言葉に、今度はカノンも納得するしかなかった。
「とにかく、ムウとカノンはここに残るんじゃ。 他の者はワシと共にこれからサガを捕らえに行く。
アレを捕らえる事に集中してくれ」
童虎の決断にムウとカノンは不服そうだったが、逆らう事は出来ない。
彼は事の次第を蘇生したアイオロスとアルデバラン、そして教皇シオンに伝えろと言っているのだ。
「奴はむしろ、俺たちが一斉にやってくるのを待っている節がある。 そうでなければ俺に連絡を取らずに、シュラかミロあたりを呼び出している」
「その意見に賛成だ。 一騎討ちなら、デスマスクは一番最後だろう。
この男は姑息な手を使うからな」
アフロディーテの同意に、デスマスクは少々嫌そうな顔をする。
「つまり向こうは、全員で来ても勝てると思っていると言う事だな」
シュラの怒りを押さえた言葉に、全員返事をすることが出来なかった。