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彼らの事情 3

「何を馬鹿な事を言っているんだ。あそこはアテナの管轄地だぞ。 あの時はアテナがいたから問題なかったが、今行けば確実に侵攻扱いを受ける」
「だから闇に紛れて行くんですよ。 とにかく騒ぎは起こさない様努力しますが、いざとなったらアリバイ工作をお願いしますね」
ミーノスが部屋のドアを閉めようとするのを、彼は慌てて止めた。
「ふざけるな! 俺がいて騒ぎを起こしたとあっては、面目丸潰れだ。
いったい何をしに、あの島へ行こうと言うのだ」
ミーノスとアイアコスは互いに顔を見合わせる。
「まぁ、共犯に隠し事をするのは良くないよな」
仲間の苛立ちの理由を理解する気のないアイアコスだった。
ラダマンティスは、このときばかりは必殺技を彼らに使いたかった。
「誰が共犯だ! とにかく理由を言え」
聞いたら既に共犯と言われても仕方ないのだが、彼としては知らないでいて、戻ってきたパンドラから役立たずと思われる方が辛い。
「昨日もアイアコスと話していたのですが、あの島はアテナの管轄地でありながら、どうも冥界に近い気がするのです。 試練が終わったら忙しくなると思いますから、今のうちに調べたいと思ったんですよ」
ミーノスの最後の言葉に、ラダマンティスは眉を顰めた。
(仕事を全て部下に任せている奴が何を言ってる)
彼の考えている事は、さすがにミーノスにも伝わる。
「ラダマンティス。苦労性のあなたに説教しても仕方ありませんが、上司の仕事と部下の仕事というのは性質が違うのです。
それでは行ってきますから、留守番を頼みますよ」
そう言われても、彼としては大人しく見送る気はない。
「どうせ門限を言っても、守る気は無いのだろう」
「門限って、若い娘じゃあるまいし何を言っているんですか」
ミーノスは呆れている。
「ならば俺も一緒に行こう。 お前たちだけでは報告書を出さないだろ」
一人で城に残されても、一緒に付いて行ってもお叱りを受けるのは多分変わらない。ならば仕事をしていて方がましだと彼は判断した。
彼は単にお目付役感覚だった。いざとなれば二人を城へ引きずれば良いという……。
「へぇ〜。報告書を書いてくれるんだ。 なら徹底的に調査しなきゃな」
「そうですね。パンドラ様への報告書はラダマンティスに任せます」
しかし、二人は都合のいいように理解した。