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沙織たちは出入り口も窓も無い部屋にいた。 しかし、柱や床の様子から聖域と似たような建築様式の神殿らしい事は判った。 「ここが目的地らしいな」 エリスは顔を上に上げた。 唯一、この部屋の天井だけがあまりの高さと暗さで、どうなっているのかが判らない。 しばらくして赤い光が舞い降りる。 「皆様、お疲れさまです。」 少しだけ目を赤くしたエウリュディケーが現れた。その右手には、あの黒い杖が握られている。 鎧は朝会った時よりも、さらに赤みを増していた。 「ユリティース。その色はどうしたんだ!」 パンドラが驚いて、彼女の腕を掴む。 「何でもありません。 それよりも今回の試練をお伝えします」 彼女はやや青白い顔をして、微笑んだ。 そして黒い杖は振られ、沙織たちの前にそれぞれ形の違う三つの壷が現れた。 「その壷をお持ちください」 彼女らは言われた通りにする。 「今から泉へつながる道を開けます。そしたらお一人づつ、その道を通って泉へ行き水を汲んで下さい。 それから次の場所へ行く道が開きます。 次の部屋に辿り着いたら、テーブルに置かれている鈴を鳴らして下さい。 こちら側にその鈴の音が聞こえたら、次の方が行動する合図です」 三人はその説明に頷く。 「それでは皆さん、お気をつけください。 私は次の部屋でお待ちしております」 エウリュディケーはそう言って一礼すると、その場から再び光となって消えた。 彼女の立っていた背後の壁が崩れさり、人が一人入れるくらいの穴が彼女たちの前に現れる。 「では、私から行こう」 そう言って、エリスは穴の中へ入った。 |