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砕け散った恋 3

「初めてお目にかかります。 私は女神ヘカテの側近をしている、エウリュディケーと申します」
「名前はいいよ。もうあたしには必要のない事だから」
仮面で表情は読み取れないが、その言葉の響きはどこかさっぱりした様子だった。
「何故、聖衣をまとってしまったのですか。
もしそれさえなければ、貴女さまを聖闘士とは思わなかったと言うのに……」
ジュネはエウリュディケーの方をじっとみる。
「自分の罪は自分で償う。 あたしにここへの行き方を教えた為に、女神の神殿の巫女たちは処罰されたんだろ」
エウリュディケーは唇を噛む。
「後悔はしていない。 早くあたしを処分しないと、あんたが危なくなるんじゃないのか?
あの黒い獣たちは女神ヘカテが可愛がっている神獣だろ」
ジュネはムチを大地に落とした。
「都合の良い話だけど、神獣を攻撃したのも勝手にここへやってきたのも、全てあたしの一存だ。
あの方たちは何の関係もない」
「……判りました。ヘカテ様にそう伝えておきます」
エウリュディケーはジュネに近付く。
「聖闘士さま、あの方たちは私が責任を持って地上へお返し致します。 ご安心ください」
そう言って彼女は右手を差し出す。
ジュネはもまた、右手を出して彼女と握手をした。
「女神ヘカテの側近が、あんたで良かったよ」
ジュネの身体から光が零れる。
そして、光はだんだんと多くなりエウリュディケーの周囲に溢れた。
(聖闘士さま……)
光が消えた大地には、エウリュディケーとカメレオン座の聖衣が残された。
「あなたは故郷へ戻りなさい」
カメレオン座の聖衣は光に包まれて、勢い良く上空へと飛び去る。
それを見送るエウリュディケーの瞳から涙が溢れ出た。
そして彼女の鎧は赤みを増した。