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「初めてお目にかかります。 私は女神ヘカテの側近をしている、エウリュディケーと申します」 「名前はいいよ。もうあたしには必要のない事だから」 仮面で表情は読み取れないが、その言葉の響きはどこかさっぱりした様子だった。 「何故、聖衣をまとってしまったのですか。 もしそれさえなければ、貴女さまを聖闘士とは思わなかったと言うのに……」 ジュネはエウリュディケーの方をじっとみる。 「自分の罪は自分で償う。 あたしにここへの行き方を教えた為に、女神の神殿の巫女たちは処罰されたんだろ」 エウリュディケーは唇を噛む。 「後悔はしていない。 早くあたしを処分しないと、あんたが危なくなるんじゃないのか? あの黒い獣たちは女神ヘカテが可愛がっている神獣だろ」 ジュネはムチを大地に落とした。 「都合の良い話だけど、神獣を攻撃したのも勝手にここへやってきたのも、全てあたしの一存だ。 あの方たちは何の関係もない」 「……判りました。ヘカテ様にそう伝えておきます」 エウリュディケーはジュネに近付く。 「聖闘士さま、あの方たちは私が責任を持って地上へお返し致します。 ご安心ください」 そう言って彼女は右手を差し出す。 ジュネはもまた、右手を出して彼女と握手をした。 「女神ヘカテの側近が、あんたで良かったよ」 ジュネの身体から光が零れる。 そして、光はだんだんと多くなりエウリュディケーの周囲に溢れた。 (聖闘士さま……) 光が消えた大地には、エウリュディケーとカメレオン座の聖衣が残された。 「あなたは故郷へ戻りなさい」 カメレオン座の聖衣は光に包まれて、勢い良く上空へと飛び去る。 それを見送るエウリュディケーの瞳から涙が溢れ出た。 そして彼女の鎧は赤みを増した。 |