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そして何もない筈の大地の上でジュネは立ち止まる。 「ここでお待ちください」 彼女は三人を待たせると、再び自分の血で大地に模様を書きはじめた。 (ジュネ……) 沙織は本当は見ていたくなかった。 しかし、目を逸らす事が許されない事も分かっていた。彼女は涙を流しながら、女聖闘士の行動を見守る。 そして、模様は神殿の時と同じように光を放ち始めた。 「この奥が女神ヘカテの神殿です。 早くお入りください」 ジュネに促されて、エリスとパンドラが何の躊躇いもなく扉をくぐった。 沙織はジュネの前に立つ。 「ジュネ……」 「アテナ、お急ぎください」 仮面のままなので、その表情を沙織が知る事は出来ない。 沙織は頷くと扉をくぐった。 その瞬間に、模様は光を失う。 「さて、あたしの役目は終わった。 好きにしろ」 ジュネの周りには、いつの間にか数多くの黒い獣たちが喉をならして威嚇していた。爛々と光る赤い目は、先程受けたムチの痛みに対しての怒り。 ふと、彼女はこんな状態の時に、大好きだった少年の事を思い出した。 (……瞬、あたしはあまり良い先輩じゃなかったね。 もう、邪魔はしないから安心しな……) 本当は会いたかったけど、顔を見たら絶対に決心が鈍る。 だから部屋の前まで近付いて、立ち去る事にしたのだ。 (ダイダロス先生……) 彼女は攻撃態勢を取らずに、ただ立っていた。 しかし、赤い光がジュネの前にやってきた時、獣たちは一匹づつ大地に還っていった。 「聖闘士さま……」 ジュネの前に現れたのは、懲罰の鎧をまとったエウリュディケー。 彼女は悲しそうな眼差しで女聖闘士の事を見た。 |