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堕ちる光 5

真夜中の五老峰では、春麗が無理矢理眠ろうと努力している。
しかし、不安と悲しさで眠りにつけない。
その時、小さな物音に気付いた。
(何かしら……)
隣で眠っていた貴鬼も起き出す。
「オイラ、ちょっと様子を見てくるよ」
彼は素早く部屋を出た。春麗も上着を肩に掛けると、部屋を出る。
その時、貴鬼とエスメラルダの話し声が彼女の耳に届いた。

「お二人を起こして、すみません」
寝つけずにいた彼女が、外へ出ようかどうか迷っていて、物音を立ててしまったらしい。
エスメラルダが申し訳無さそうに肩を落としているのを見て、春麗は何だか彼女が可哀相に思えてくる。
「それじゃぁ、ちょっと散歩しましょう。 私はちょっと精霊さんの様子を見てきます。
貴鬼ちゃんはエスメラルダさんを大滝の方へ案内してあげて」
「判った。ゆっくり案内するよ」
貴鬼はエスメラルダの手を取る。
「春麗は後から来るから、先に行こう」
「はい」
エスメラルダは嬉しそうに笑った。

春麗は自分の部屋へ向かうと、依然眠り続ける女性を見た。
どうやら貴鬼はこの女性について何かを知っているらしいが、自分に言わないところをみると聖域関係者なのかもしれない。
「精霊さん。ちょっと今から散歩に行ってきます。
直ぐに戻ってきますから、心配しないでくださいね」
明日になればエウリュディケーがやってきて、二人を引き取る事だろう。
(一度くらいお話をしてみたい気がするけど、無理かしら……)
春麗は部屋を出る前に、もう一度彼女の方を振り返る。
彼女は変わらずに眠り続けていた。