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「被り物をしたまま失礼致します。 これから女神ヘカテの神殿へご案内致します」 女性の声であった。 「貴女はヘカテ様の所の巫女なの?」 「時間がありません。私を信じてついてきて下さい」 彼女はそう言うと、素早く立ち上がり沙織たちの前を通って、神殿の中へ入って行った。 一瞬、沙織はその女性から小宇宙を感じた。 (まさか、聖闘士の誰かなの?) しかし聖闘士が、太古の女神の神殿への行き方を知っているというのは変だった。 「とにかく行こう」 三人は再び神殿の中へ入った。 神殿の中は先程と変わらず、薄暗かった。部分的に太陽の光が西から差し込んで、赤い光が朽ちた壁を照らしていた。 「今から扉を開けます。 但し、神殿に着くまで一言も喋らないでください」 謎の女性は神殿の祭壇があった場所に立つ。 そしていきなり自分の左手に傷を付けたのである。 床に彼女の血が滴る。 「何を!」 沙織たちは慌てて女性に駆け寄ろうとした。 その時、沙織とパンドラはエリスに片方づつ腕を掴まれて動くことを止められる。 「そこでお待ちください! 今、扉を開けます」 マントの女性の言葉は有無を言わせぬ強い響きがあった。 「アテナにパンドラ。彼女は我々を導こうとしているのだ。絶対に邪魔をするな」 「でも、あの人が……」 「これが最後のチャンスだ。失敗したら彼女の行為が無駄になる」 既に女性は自分の血で床に模様を書きはじめている。 「今は堪えろ。この試練を始める時に、どんな事にも堪える覚悟をしたのではないのか」 沙織は俯き、パンドラは女性の行動をじっと見ていた。 そして女性は模様を書き終えたのか、床に手をつく。 「今、扉が開きます。 時間がありません。素早くお入りください」 その言葉の直後、床が光を放ちはじめ、部屋全体が金色の光に包まれた。 「さぁ、早く!」 女性の手招きで、三人は次々と解放された門に飛び込んだ。 |
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