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届かぬ想い 1

聖域のとある社殿はでは、アテナを助ける為に冥府まで駆け降りた五人の少年が、今静かに眠っている。
星華は椅子に座って、弟の手を握っていた。
(星矢……。お願い、起きて……。神様、星矢を連れて行かないで下さい)
もう何度目とも判らない、祈りの言葉。彼女は涙が零れるのを押さえられなかった。
「やだっ」
弟に泣き顔を見られたくなくて、彼女は急いで部屋の外へ出る。
(あらっ??)
廊下に出てみると、一人の女性聖闘士が別の部屋の前に立っていた。
(誰かしら……)
女性聖闘士は顔にマスクをしているので直ぐに判るのだが、彼女は星華の知っている魔鈴やシャイナではなかった。
向こうも星華の事に気がついた。
しかし、その女性聖闘士はそのまま立ち去ろうとする。
「ジュネ!」
背後でいきなり魔鈴の声がしたので、彼女はビックリして魔鈴と知らない女性聖闘士を交互に見た。

「お久しぶりです。魔鈴さん」
ジュネと呼ばれた女性は、魔鈴に挨拶をする。
「今まで何処にいた。招集が無かったとは言わせないよ」
「……失礼します」
彼女はそのまま魔鈴の横を通りすぎた。
「ジュネ!」
しかし、魔鈴もジュネを追いかけたりはしなかった。
(招集にも応じず、いったい何をやっていたんだ……)
魔鈴はようやく星華の存在に気がついた。
「星華ちゃん。ジュネはここで何をしていた?」
「私が部屋から出てきた時は、ここに立っていました」
星華が教える場所の部屋を魔鈴は開けた。 そこには瞬が眠っている。
「如何なさいましたか?」
彼に付き添っている神官が、椅子から立ち上がる。
「ここにジュネが来なかったか?」
「いいえ、どなたも見えていません」
神官が嘘をつく必要はない。魔鈴は邪魔して悪かったと言うと、部屋を出た。
(あいつ、アンドロメダの顔も見ないつもりなのか……)
ジュネの行動が魔鈴には判らなかった。