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「そのような事が起こっていたのか」 ハインシュタイン城で待っていたパンドラに、沙織は昨日の出来事を話した。 全てを話した。 彼女に隠し事をしたところで傷は大きくなるだけで、いずれその傷は聖域と冥界の関係を悪化させる。 そうなればその傷は、再び人の血を求める事が容易に想像がついたからだ。 沙織にとって、辛く悲しい告白だった。口は重く、胸の中に広がる不安は今にも自分を押しつぶしかねない。 パンドラは沙織の持ってきた服に着替えているので、この部屋には女性は二人しかいない。 カノンは別の部屋で二人が部屋から出てくるのを待っている。 「よく分かった」 パンドラは沙織のほうを振り向かずに、ベルトを締めながら答える。 「パンドラ……」 「起きてしまった事をとやかく言うまい。あの少女たちは、今は行方不明の段階だろ」 彼女は沙織を見ない。 「聖域でも探しているわ。 エウリュディケーに尋ねたら、冥界へは来ていないって……」 「ユリティースが言うのなら、そうなんだろう」 彼女の名を口にして、パンドラは心が痛んだ。 しかし、沙織に悟られないように無表情を決め込む。 「それなら聖域の混乱は聖域でカタをつけろ」 沙織は目を赤くしながら頷いた。 「但し、双子座が攻撃しに来た時は、遠慮なく冥界へ送る。後で文句を言うな」 彼女は短剣の入ったホルダーを腰に装着する。 そしてパンドラは着替えを終えたのだった。 「しかし、エリスが目的の神殿を知っていて助かったな」 沙織が来る少し前に、パンドラもエウリュディケーの訪問を受けている。 その時の三巨頭たちは、彼女を見て少なからず驚いていた。 |
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