☆ |
|
| ☆ |
「まさか、邪魔ってサガの事なの!」 沙織は両手で顔を覆った。 エリスは冷たい眼差しで彼女を見た後、ジュリアンの方に顔を向けた。 「海皇の依代は巻き込まれただけだ。しばらくすれば起きるだろう」 そう言ってエリスは立ち上がろうとするが、酷い怪我で上手く立ち上がれない。 沙織はエリスに肩を貸す。 「絵梨衣さんを助ける方法はないの?」 「一応ある。だが、今は試練の方が先だ。 こっちにもエウリュディケーが来たのだろ」 争いの女神はあまり動揺せずに話をする。 沙織には彼女の落ち着きが、逆に心を乱される。 そこへ童虎が近づいてきた。 「とにかく傷の手当をするのが先じゃ。 このような状態では、依代殿の身体にも負担が掛かる。 アテナ。こちらの海皇の依代殿に関しては、カノンとセイレーン殿に任せても宜しいですか?」 沙織ははっと気がついて、首を縦に振った。 「カノン、今話した通りじゃ。 この方をセイレーン殿と一緒に町の方へ連れていってくれ。 ムウ、すまんが女神エリスを頼む。 ワシはアテナと冥王の姉の所へ行く」 童虎の言葉に沙織が驚いた。 そしてカノンが彼の真意に気がついた。 「老師、それは俺の役目だ。 老師はセイレーンと一緒に行動してくれ」 「何を言うか。これは年寄りの役目じゃぞ」 } 「これは兄の起こした不祥事だ!俺が隠れているわけにはいかない」 沙織の脳裏に最悪のシナリオが思い浮かんだ。 「まさかサガがパンドラたちに危害を加えると思っているの……」 「判りません。しかし、あらゆる事態を想定しなくてはなりません」 ムウの言葉に、沙織はそれ以上何も言えなかった。 「とにかく、アテナはパンドラに事の次第を伝えておけ。 ヘカテ様の神殿へは、その後で行く。 私の依代については、その後でも間に合う」 エリスに怒鳴られて、沙織は渋々頷いた。 |
|
|