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癒えぬ傷 3


「まさか、邪魔ってサガの事なの!」
沙織は両手で顔を覆った。
エリスは冷たい眼差しで彼女を見た後、ジュリアンの方に顔を向けた。
「海皇の依代は巻き込まれただけだ。しばらくすれば起きるだろう」
そう言ってエリスは立ち上がろうとするが、酷い怪我で上手く立ち上がれない。
沙織はエリスに肩を貸す。
「絵梨衣さんを助ける方法はないの?」
「一応ある。だが、今は試練の方が先だ。 こっちにもエウリュディケーが来たのだろ」
争いの女神はあまり動揺せずに話をする。
沙織には彼女の落ち着きが、逆に心を乱される。
そこへ童虎が近づいてきた。
「とにかく傷の手当をするのが先じゃ。 このような状態では、依代殿の身体にも負担が掛かる。
アテナ。こちらの海皇の依代殿に関しては、カノンとセイレーン殿に任せても宜しいですか?」
沙織ははっと気がついて、首を縦に振った。
「カノン、今話した通りじゃ。 この方をセイレーン殿と一緒に町の方へ連れていってくれ。
ムウ、すまんが女神エリスを頼む。
ワシはアテナと冥王の姉の所へ行く」
童虎の言葉に沙織が驚いた。
そしてカノンが彼の真意に気がついた。
「老師、それは俺の役目だ。 老師はセイレーンと一緒に行動してくれ」
「何を言うか。これは年寄りの役目じゃぞ」 }
「これは兄の起こした不祥事だ!俺が隠れているわけにはいかない」
沙織の脳裏に最悪のシナリオが思い浮かんだ。
「まさかサガがパンドラたちに危害を加えると思っているの……」
「判りません。しかし、あらゆる事態を想定しなくてはなりません」
ムウの言葉に、沙織はそれ以上何も言えなかった。
「とにかく、アテナはパンドラに事の次第を伝えておけ。
ヘカテ様の神殿へは、その後で行く。 私の依代については、その後でも間に合う」
エリスに怒鳴られて、沙織は渋々頷いた。