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「ヘカテ様の神殿って……」 場所を言っておきながら、あまりにも抽象的な言葉である。 「あれが、試練の審判殿か?」 隣にいた童虎がソレントに尋ねる。 「そうです。あの方が審判役でなかったら、きっとアテナたちは第一の試練を成し遂げられなかったと思います」 どこの世界に試練を成し遂げさせてくれる審判がいるのだろうか。それも自分の身を犠牲にしてまで……。 「そうか……」 童虎はそれ以上尋ねなかった。ソレントは童虎の隣にいるカノンの方を見る。 彼は沙織をじっと見ていた。 (何だ……、今朝から嫌な予感がする) 彼は二つ目の試練に何かとてつもない事態が発生しそうで、沙織を止めた方が良いような気がしていた。 しかし、賭けているものが闘士たちの命では、あの女神が素直に納得するとは思えないし、自分もまた兄のしでかした事の決着を付けねばならない。 故に彼の答えは既に決まっていた。 (ならばアテナを守り、サガを止めるだけだ) カノンはその拳に力を込めた。 そして沙織の方では、彼女がその場から少し動いた時、強烈な光が広場に落ちてきた。 ムウが咄嗟に沙織を庇う。 「アテナ。こいつを頼む」 その女性は一人の青年に肩を貸していた。 だが、青年は気を失っているのか、身体が傾いている。 「ジュリアン様!」 ソレントは広場へ駆け寄った。 「エリス!」 沙織は悲鳴を上げる。 争いの女神はその姿を変えており、その姿は彼女の知り合いのものだったのだ。 そして彼女は傷ついていた。 「エリス!」 ソレントは急いでジュリアンを受け取る。彼は眠っているようだった。 「何で絵梨衣さんの身体なの。何があったの!!」 「少々邪魔が入っただけだ。お陰で依代の魂は吹っ飛んで何処かへ行ってしまったがな」 「何ですって!」 「双子座が奇怪しくなっていたが、心当たりはあるか?」 争いの女神は沙織の顔を見る。 |
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