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先手 1

その日、ジュリアンは星の子学園の方を見ている一人の男性を見かけた。
(?)
何処かで見た事のある男性に、ジュリアンはしばらくその場で考え込んだ。
(何処だろう?)
腕を組んで考えてみても、思い出せない。
(グループ企業が派遣した護衛?)
すると誰かが自分の服の裾を掴んだ。
「お兄ちゃん。あの人、お兄ちゃんの友達?」
学園で預かっている少女であった。
「違うと思います」
そう言いながら、彼は昨夜見た夢を思い出した。
(他人の空似かもしれない)
近くに寄って確かめてみたい衝動に駆られる。
(あの双子の青年に似ている気がするが……)
「どうしたのですか?」
考え込んでいるジュリアンに絵梨衣が話しかけた。
「……エリイさんは夢であった人に、実際に会った事がありますか?」
「はぁ?」
ジュリアンが青年から目を逸らし、絵梨衣が青年の方を見た瞬間、異変が起こった。
二人の視界にある風景が奇妙に歪んだのである。
「あれっ??」
傍にいた少女が、二人の姿を探す。
「お兄ちゃん〜、絵梨衣お姉ちゃん〜」
急にいなくなった二人の姿を求めて、少女は泣きはじめた。
「どうしたの!」
泣き声を聞きつけて、美穂が慌てて少女のもとへ駆け寄る。
「お兄ちゃんと絵梨衣お姉ちゃんが消えちゃった〜」
美穂は周囲を見回したが、人の姿はない。
「消えたって?かくれんぼしているの?」
「違うの。ぱっといなくなっちゃったの〜」
「??」
どうとって良いのか判らないが、ジュリアンの友人が行方不明である以上、もしかすると誰かに連れ去られたのではないか。
(まさか!)
美穂は少女を抱き上げると教会へ走った。