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「すまないが、これから冥界へ駆け降りてもいいか?」 「やめておけ。今はヘカテ様がお前たちの運命を握っている。 試練終了後、一度は復活するぞ」 二人の間に、沈黙が流れた。 「そういうことで、ポリュデウケースも間抜けな奴だ。邪魔をした射手座たちを何処かへ飛ばしても、今の時点では無駄に終わる。 よっぽどテティスの存在が腹に据えかねていたんだろうな」 サガの表情が硬直する。 「やはり……私はアイオロスを……」 「射手座だけではない。牡牛座も五人の海闘士も吹き飛ばしてくれた。 アテナは黄金聖闘士たちにお前を捕まえるよう、命令を出したぞ」 彼は両手を強く握りしめた。 「私は何ていうことを……」 しかし、エリスの返事は意外なものだった。 「いずれ私の妹でありヤツの母親であるネメシスがお前を裁きに来る。その時に覚悟を決めれば良い話だ。 今はどうすべきかを考えろ」 ネメシス。神への思い上がった無礼な行いに対して罰を与える女神の名を出されて、サガは自嘲した。 こんな皮肉は無いと思ったからである。 「お前が最後の希望だからな」 「……?」 「ポリュデウケースの暴走を止められるのは、お前だけだ」 夕暮れの冷気が部屋に忍び込む。部屋にある明かりは、魔方陣の図面だけのような状態であった。 「残念ながらヤツは私を毛嫌いしているから、いつも戦いになってしまう」 (分かる気がする……) こんな伯母がいたら息苦しいだろうと、彼は思わずもう一つの人格に同情した。 「別の人格とは言え、こうしてお前と話が出来るのは実は奇跡としか言い様がない」 サガは俯いた。身内の愚痴を聞かされても、対応のしようが無いからだ。 「とにかく、ポリュデウケースには注意を払ってくれ」 自分の事とは言え、奇妙な内容にサガは頭が痛くなってくる。 「それから、双子座。ついでに頼みがある」 「何だ?」 「日本に私の依代がいる。 今の身体は母の力で作られているが、依代をぶつけられたら、私はどうしても依代のほうへ引きずられてしまう。そうなると、少々問題が発生するのだ」 「問題だと?」 「運動能力と耐久性が依代に同化してしまうのだ。この時に致命傷を喰らうと、しばらく動けなくなってしまう。 ポリュデウケースが私の依代に気がついたら、その娘から離れてくれ」 エリスの真剣な眼差しに、彼は頷いた。 「あまり無茶はするなよ」 争いの女神は再び暗闇へと溶け込んだ。外は既に日が落ちていたのだった。 (ポリュデウケース……。初めてあいつの名前を知ったな……) サガは魔方陣から足を踏み出した。 |
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