☆ |
|
| ☆ |
そして事の緊急性を考慮して、カノンとソレントは女神ヘカテの海底神殿へやってきた。 沙織については混乱する聖域を離れるのは良くないと説得し、そして追いかけさせないようにムウと老師が神殿まで送らせての行動である。 「アテナは油断も隙もない方でしたね」 自分もまた、ポセイドンのもとへ案内させられた経験があるので、カノンの判断を笑えない。 「アテナが動く前に用件を済ませれば良いだけの話だ」 エリスとは別の意味で問題の多そうな女神だと、ソレントは思った。 (そう言えば、あの時エリスの声が聞こえた気がしたけど……) 夢の中で彼女の声を聞いたなど何か妙な感じがして、彼は直ぐに気のせいだと思い直す。 「シードラゴン、聞きたい事があるのですが……」 「あれは本当に俺の兄だ。 ただ、人格が変わったところを見たのは、今回が初めてだ」 カノンは振り向かずに勝手に答えた。 しかし、それはソレントの聞きたい事、そのものだった。 海の中で双子座の聖衣がキラキラと輝く。鱗衣とは違うその輝きは、儚げでもあった。 「人格が変わるのですか?」 初めて見かけたのは、エリスと一緒にアテナの神殿に行った時。 カノンと同じ顔だったが、向こうのほうが思慮深い印象があった。 「そうらしい。実際、俺は一度も見てはいなかったから、どういう状態なのか詳しく知らない。 そう言えば『兄は化け物を飼っている』と言われた事がある」 聞いている方は、もうちょっと発言をソフトに出来ないのかと考える。 (そんな事が出来れば、海将軍だった時もうちょっと上手く立ち回れたでしょうね) はっきりし過ぎている性格は、どんな立場でも変わらないらしい。 「シードラゴンが聖闘士を嫌っていたのは、あの人の所為なのですか?」 「……今となっては、何が原因か思い出せん。だが、こうなった事を後悔はしていない」 ソレントはそれ以上何も聞かなかった。カノンも話をしなかった。 しばらく歩いて行くうち、二人はようやく女神ヘカテの神殿へたどり着く。 「エウリュディケーさん、いらっしゃいますか?」 神殿の入り口で、ソレントが呼びかける。 すると奥から女性が走ってきた。 |
|
|