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ジュリアンは考えていた。 友人のソレントが謎の一団に連れ去られ、自分は近くの教会に運び込まれた。 日本の警察に連絡は取ったのだが、この話がソロ家ゆかりの人間の耳に入ったらしく、今説得されている。 「早くソロ家の当主として、グループをまとめて下さい」 以前、海が荒れ、雨が降りやまなかったという天変地異が世界中に起こった。 自分にはその時期の記憶が無い。行方不明だったと近しい者から言われた。 それを聞いて、彼は誘拐されたのだろうと判断した。今までに何度もあった事だから、今更驚かない。 殺伐とした人生経験である。 (だから財産を全て寄付したのだ) ソロ家は昔から海皇の守護を受けていた。 海に関わる事業では、世界のシェアの十数パーセントはソロ家が株主である。 それ故に、人の欲も集まる。最近では関連企業の中に、海を汚す事を厭わない者まで出てきた。 海は決して人間のものにはならない。汚す事も、その恵みを独占する事も、神への反逆に他ならない。 (行き過ぎた独占が海皇さまを怒らせる原因になったのだ。そのような血筋が再びトップに立っても、以前のようにはいくまい) 「ジュリアンさま」 説得する人間は一人だというのに、その人間に付き添って五人の男が部屋にいる。 (何がそんなに不安なのだ?) ジュリアンは自分の目の前にいる男を哀れだと思った。 そして少し前の自分がその仲間だった事に笑わずにはいられなかった。 「ジュリアンさま、何が可笑しいのですか」 相手はあからさまに気分を害したらしい。 「話は聞いたが、私はここで友人が見つかるのを待つつもりだ。 それにもう私は一文なしだ。 そのような者に返り咲けとは、ソロの名前が無いと不味い事でも起こったのか?」 相手は真っ青になった。 「一緒に帰らなくてもいいのですか?」 部屋に一人残されたジュリアンに美穂が話しかける。 「顔が見たくなって来ただけですから、気にしないで下さい」 彼は椅子から立ち上がる。 「ところでミホさん。友人の消息が分かるまで、ここにいさせてくれませんか?」 「それは、神父さまや子供たちも喜びます。 ジュリアンさんのされる外国の話はとても面白いですもの」 美穂も嬉しそうに笑った。 |
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