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「偶然とはいえ、海闘士の四将軍にお会い出来て光栄だ」 牡牛座のアルデバランに穏やかな態度でそう言われた事で、彼らは冷静に人の話を聞く姿勢を取り戻したらしい。 (この人は何でこうも、場を収めるのが上手いのだろうか?) ソレントはアルデバランを見て、不思議に思った。 「ところで、まずは少女たちを神殿で休ませたい。 詳しい話は部屋を用意させるので、そこでやって欲しいのだが……」 黄金聖闘士の前で諍いは見苦しいと思った彼らは、それ以上怒るのを止めた。 「それでは、お言葉に甘えよう。手間をかけさせるが、よろしく頼む」 クリシュナの言葉に、アルデバランは穏やかな表情で頷いた。 そして、神官たちに案内された部屋で話をすることになったのだが……。 どうしてもテティスの様子が心配で、彼らはアルデバランと神官が会話している部屋にやってきたのだった。 しかし、アルデバランはイヤな顔一つせずに、部屋へ入れる。 部屋では女官と思われる女性達が、少女たちの世話をしている。 (この人が聖域にいて、本当に良かった) ソレントとアイザックはこの幸運に感謝せずにはいられない。 女性達は一通りの事を終えると、お辞儀をして部屋から出た。 「よく分かった。仕方のなかった事だろう。そこは理解する」 一通りの説明を終えると、彼らは一応納得したらしかった。 しかし、アイザックとソレントは四人に囲まれて居心地が悪い。 「やはりシードラゴンを連れてくるべきだった」 ソレントはアイザックに小声で話しかけた。 「今更仕方ありません。彼は寝ていたし、こっちはテティスが海の事を呟くから、早く連れて行きたかったし、それにいちいち許可を貰う必要はありません」 実際、ソレントはカノンに会うのが辛い。 昨夜、聞こえてきたオルフェウスの竪琴の音色の意味を知ってしまう気がしたからだ。 その時、アルデバランは十二宮の方向から、何か奇妙な気配を感じた。 その直後にカノンから、その場にいるよう連絡が来た。 アイザックも立ち上がって周囲を見回す。 「どうした。クラーケン」 「……」 元聖闘士訓練生だったアイザックは、カノン以外の海将軍たちよりも鋭い感覚を持つ。 これは最初から生き方が違う為、他の五人の海将軍たちには真似が出来ない。 彼らはアイザックの反応で、何かが起こっているのだろうと判断した。 一方、アルデバランはカノンの反応に嫌な感じがした。 だが、今は十二宮に全員がいるのである。直ぐに問題は解決されると思った。 そして彼が部屋を出ようとした時、一人の黄金聖闘士がやって来た。 「サガ、どうしたんだ」 「賊がこの神殿へ逃げ込んだらしい」 彼が部屋に入ると、もう一人の黄金聖闘士が部屋の入り口に現れた。 「そこで止まってもらおう」 アイオロスの言葉にサガは立ち止まる。 「アルデバラン、海闘士殿。その少女たちを避難させろ!」 アイオロスの有無を言わせない命令に、アイザックがテティスを連れ出そうとする。 「遅いな」 サガは冷たい微笑みを浮かべてる。 次の瞬間、神殿は光に包まれた。 そしてアテナの神殿では、沙織が判断を下した。 「私はサガの中にいる邪悪と対決します」 沙織は迷うことなく神殿の外へと歩きだす。 三人の黄金聖闘士たちはその後を付いていった。 |
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