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予感 3

結局、海闘士たちがエウリュディケーに見送られて女神ヘカテの海底神殿を後にしたのは、かなり太陽が高くなってからだった。
原因は昨夜の晩餐。女神ヘカテの神殿の料理長という自分のプライドを掛けて、自信作の数々を出してきたのである。
(これも修行)
クリシュナは晩餐の間、ずっと心の中で唱えていたらしい。
さて彼らにとっては久しぶりの地上。海も空も深い青が美しかった。
「あいつらをどう見つけるか」
バイアンは大きく伸びをした。
いきなり聖域に乗り込むと、いらぬ争いの原因になる。
物分かりの悪い聖闘士との接触は避けたいので、彼らはまず聖域が所有する海辺の神殿へ行くことにした。
「神殿なら神官がいるはずだし、いきなり戦闘状態にはなるまい」
その代わり、そこで闘うと事情は個人的では済まなくなり、宣戦布告の意味を持つ。
「ちょっと待て!」
クリシュナが遠くを見る。
「隠れるんだ。聖闘士らしい」
神殿に入っていない以上、むやみな接触は避けねばならない。
海辺の神殿へやってきたのは、牡牛座のアルデバランだった。遠目でもその巨体はとても目立つ。
「黄金聖闘士かよ!」
四人は小声で叫んだ。
アルデバランは少女を一人抱えている。その後に続いて、ソレントとアイザックがやってきた。
アイザックもまた少女を抱えている。
「まさか……」
イオは思わず彼らのもとへ急いだ。
「セイレーン!クラーケン!その人はまさか」
イオの呼び声に、二人の海闘士の将軍は驚く。
「スキュラ!」
そして一瞬にしてテティスの存在が彼らにバレたのであった。
「聖域の管理する神殿前で、海闘士の将軍たちが内輪もめか?」
奇妙な光景にアルデバランは、どう仲裁しようかと考える。
神殿内では、二人の少女を受け入れる為に徹夜で準備していた聖域の神官がオロオロしていた。