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海皇の見る夢

その頃、日本の星の子学園ではエリスの依代であった少女が空を見上げて、涙を零していた。
「絵梨衣ちゃん。どうしたの?」
一緒に庭の掃除をしていた美穂は何事かと思い、彼女に駆け寄った。
「何でもないわ。ただ、悲しくて……。可笑しいわね」
絵梨衣は半分笑いながら涙を拭う。
「そう言えば、ジュリアンさんは?」
「子供たちと遊んでいるわ。やっぱりお友達がいきなりいなくなって、不安みたい。
何かやらせてくれって言っていたから、子供たちを任せてきちゃった。
ジュリアンさん、日本語が上手いわね」
すると噂をすれば影とばかりに、端正な顔だちの青年が二人の所へやってきた。
「ミホさん、タオルはありますか?」
「タオル?」
「子供たちが濡れてしまいました」
そう言っているジュリアンも、腕の部分が濡れていた。
「もしかして、蛇口をいじったのね」
絵梨衣は慌てて水道の所へ走って行った。 ジュリアンと美穂は二人っきりになる。
「あっ、タオルですね。こっちに来てください」
美穂の後を、ジュリアンが付いて行く。
「ミホさん」
「何ですか?」
振り向いた美穂の目の前に、ジュリアンの顔があった。
一瞬、何事かと思い、彼女は硬直する。
「やはり似ている気がする……」
「な、何ですか?誰に似ているのですか?」
そして顔を真っ赤にしながら、ほんの少しジュリアンと距離を取ったのだった。
「今朝の夢に出てきた少女です」
「夢……ですか?」
「そうです。今まで何度も見ていた夢なのですが、今朝ははっきりと顔が見れました。
とても不思議です」
再びジュリアンは美穂との距離を縮める。
「どことなくミホさんに似ていました。 もしかしたら……」
そのとき二人は第三者の視線を感じた。
「絵梨衣ちゃん……」
誤解されるような距離ではないが、美穂は恥ずかしくなって顔を赤くした。
「美穂ちゃん。このままだとジュリアンさん、風邪をひいちゃうわよ」
ここにいて良かったのか、悪かったのか。
絵梨衣は悩んでしまった。