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「付き合わせて済まなかったな……」 争いの女神の意外な言葉に、その場にいた黄金聖闘士たちは驚く。 何か悪いものでも入っていたのかと、五人は自分の持っているワイングラスを見た。 「エリス様、お別れの挨拶に参りました」 彼女の横に亡霊聖闘士の五人が立つ。 そしてムウ、カノン、童虎、アイオロスが神殿前に現れた。 「何でお前たちが来るんだ!」 サガは何事かと慌てた。 「それはこっちのセリフだ!何を飲んでいるんだよ」 カノンはアフロディーテの持っているワイン壷をひったくる。 香りでそれが何なのか判った彼らは、一様に冷たい視線を向けた。 「その壷は返してもらう」 エリスがカノンの手から壷を消した。 「では、ワイングラスを返してもらおう」 アフロディーテは全員からグラスを受け取る。 「我々の為に色々とありがとうございます」 ジャガーが恭しく礼をする。 「楽しかったか?」 エリスは五人の顔を見た。 東の空が白々としていくと同時に、彼らの身体は透けていく。 サガたちはその理由に薄々勘付いた。 「あれは餞別だ。面白かっただろう」 「忘れられない思い出です」 オルフェウスは持っている竪琴を撫でると、アフロディーテの事を見た。。 「感謝する。魚座の黄金聖闘士」 「私は完全勝利をしたい。もう一度、勝負をしろ」 アフロディーテ自身、無茶だと分かっていた。亡霊聖闘士たちは笑う。 「それからエリス様、あの方に迷惑を掛けるような真似は慎むよう、お願いいたします」 オルフェウスのその目つきは、やたらと真剣だった。 「気をつけよう。 ところであの海闘士には言う事は無いのか?」 「彼にはもう告げておきました」 関わりが深かった海皇の海闘士へは、あのメロディで分かってくれる気がする。 「そうか、ならいい」 エリスは苦笑いする。 クライストはカミュの方を向く。 「ありがとう。楽しかった」 「いや、私こそ楽しませてもらった」 実際は思うように身体が動かなかった為、捕獲の時は熱くなっていたのだが、さすがに水瓶座の黄金聖闘士はクールに答える。 「天秤座、会えて嬉しかった。山羊座、感謝する。 それからエリス様、ポセイドンの依代は、貴女の依代の元にいます。 セイレーンにそう伝えてください」 「分かった。よりによってと言いたいが、まぁそれも仕方ないな」 エリスは腕を組む。 童虎は溢れる涙を堪え、シュラはヤンをじっと見た。 「それじゃぁ、エリス様、お元気で! アテナとこの聖域に、祝福の光が降り続きますように」 魔矢は手を軽く振った。 そして朝日と共に彼らの姿はかき消された。 |
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