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星空 3

「付き合わせて済まなかったな……」
争いの女神の意外な言葉に、その場にいた黄金聖闘士たちは驚く。
何か悪いものでも入っていたのかと、五人は自分の持っているワイングラスを見た。
「エリス様、お別れの挨拶に参りました」
彼女の横に亡霊聖闘士の五人が立つ。
そしてムウ、カノン、童虎、アイオロスが神殿前に現れた。
「何でお前たちが来るんだ!」
サガは何事かと慌てた。
「それはこっちのセリフだ!何を飲んでいるんだよ」
カノンはアフロディーテの持っているワイン壷をひったくる。
香りでそれが何なのか判った彼らは、一様に冷たい視線を向けた。
「その壷は返してもらう」
エリスがカノンの手から壷を消した。
「では、ワイングラスを返してもらおう」
アフロディーテは全員からグラスを受け取る。
「我々の為に色々とありがとうございます」
ジャガーが恭しく礼をする。
「楽しかったか?」
エリスは五人の顔を見た。
東の空が白々としていくと同時に、彼らの身体は透けていく。 サガたちはその理由に薄々勘付いた。
「あれは餞別だ。面白かっただろう」
「忘れられない思い出です」
オルフェウスは持っている竪琴を撫でると、アフロディーテの事を見た。。
「感謝する。魚座の黄金聖闘士」
「私は完全勝利をしたい。もう一度、勝負をしろ」
アフロディーテ自身、無茶だと分かっていた。亡霊聖闘士たちは笑う。
「それからエリス様、あの方に迷惑を掛けるような真似は慎むよう、お願いいたします」
オルフェウスのその目つきは、やたらと真剣だった。
「気をつけよう。 ところであの海闘士には言う事は無いのか?」
「彼にはもう告げておきました」
関わりが深かった海皇の海闘士へは、あのメロディで分かってくれる気がする。
「そうか、ならいい」
エリスは苦笑いする。
クライストはカミュの方を向く。
「ありがとう。楽しかった」
「いや、私こそ楽しませてもらった」
実際は思うように身体が動かなかった為、捕獲の時は熱くなっていたのだが、さすがに水瓶座の黄金聖闘士はクールに答える。
「天秤座、会えて嬉しかった。山羊座、感謝する。
それからエリス様、ポセイドンの依代は、貴女の依代の元にいます。
セイレーンにそう伝えてください」
「分かった。よりによってと言いたいが、まぁそれも仕方ないな」
エリスは腕を組む。
童虎は溢れる涙を堪え、シュラはヤンをじっと見た。
「それじゃぁ、エリス様、お元気で!
アテナとこの聖域に、祝福の光が降り続きますように」
魔矢は手を軽く振った。

そして朝日と共に彼らの姿はかき消された。