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沙織はマントの温かさで、睡魔に負けそうになっていた。 「アテナ、私たちはここにいますから、どうか部屋へお戻り下さい」 カミュが話しかける。 「でも……」 彼女はこの場から離れる事が惜しい気がしていた。 「いきなり失った時間を取り戻そうとするな。これからいくらでも取り戻すのだろ」 そう言いながら、エリスは眼下に見える小さな明かりを見ている。 「……わかったわ。みんな、ありがとうね」 マントを借りたまま、沙織は神殿へ入っていく。 「お休みなさい」 一度振り返った時の彼女は、とても優しい笑みを浮かべていた。 沙織が神殿に戻るのを見届けると、エリスは手を前に差し出した。 そして現れたのは土で焼かれた壷。辺りにワインの香りが漂う。 「ディオニソスから貰った秘蔵のワインだ。今日は飲みたい気分でな。 杯を貸してくれないか」 酒の神の名前を出されて、シュラはどう反応して良いのか分からない。 「何でそんなものを持っているんだ!」 「聞きたいか?命と引き換えになるぞ」 エリスの微笑みに、彼は沈黙した。 既に他のメンバーはワイングラスを持っている。アフロディーテが双魚宮から持ってきたらしい。 「お前たち何をやっているんだ!」 「何って、女が酒を飲みたい気分だって言っているんだ。付き合ってやれよ。 食い物が無いのは我慢するか」 デスマスクはシュラにワイングラスを渡す。 「好きなだけ飲んでいいぞ。その壷を壊さない限りワインは無くならないし、たまに味も色も変化する」 「凄いな」 カミュは静かにワインを注いだ。 「カミュ、大丈夫なのか!」 シュラは警戒しているが、既にサガとデスマスクは一杯目を飲み干していた。 「これは美味いな」 アフロディーテも味わっている。 「大丈夫らしい」 そしてカミュも飲む。 (こいつらは〜) シュラはそう言いながら、やはりワインを口にした。 |
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