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星空 1

沙織はマントの温かさで、睡魔に負けそうになっていた。
「アテナ、私たちはここにいますから、どうか部屋へお戻り下さい」
カミュが話しかける。
「でも……」
彼女はこの場から離れる事が惜しい気がしていた。
「いきなり失った時間を取り戻そうとするな。これからいくらでも取り戻すのだろ」
そう言いながら、エリスは眼下に見える小さな明かりを見ている。
「……わかったわ。みんな、ありがとうね」
マントを借りたまま、沙織は神殿へ入っていく。
「お休みなさい」
一度振り返った時の彼女は、とても優しい笑みを浮かべていた。
沙織が神殿に戻るのを見届けると、エリスは手を前に差し出した。
そして現れたのは土で焼かれた壷。辺りにワインの香りが漂う。
「ディオニソスから貰った秘蔵のワインだ。今日は飲みたい気分でな。 杯を貸してくれないか」
酒の神の名前を出されて、シュラはどう反応して良いのか分からない。
「何でそんなものを持っているんだ!」
「聞きたいか?命と引き換えになるぞ」
エリスの微笑みに、彼は沈黙した。
既に他のメンバーはワイングラスを持っている。アフロディーテが双魚宮から持ってきたらしい。
「お前たち何をやっているんだ!」
「何って、女が酒を飲みたい気分だって言っているんだ。付き合ってやれよ。
食い物が無いのは我慢するか」
デスマスクはシュラにワイングラスを渡す。
「好きなだけ飲んでいいぞ。その壷を壊さない限りワインは無くならないし、たまに味も色も変化する」
「凄いな」
カミュは静かにワインを注いだ。
「カミュ、大丈夫なのか!」
シュラは警戒しているが、既にサガとデスマスクは一杯目を飲み干していた。
「これは美味いな」
アフロディーテも味わっている。
「大丈夫らしい」
そしてカミュも飲む。
(こいつらは〜)
シュラはそう言いながら、やはりワインを口にした。