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「あの方は争いの女神だが、それと同時に『競い』の女神だ。 一方的に終わる戦いは争いではない。あの方はそれを嫌う。 逆に絶対的な力に立ち向かう者たちには、惜しみない協力をしてくれる方なんだよ」 「では、紫龍たちは……」 童虎は右手で顔を押さえた。 「失礼ながらあのまま聖域に乗り込んだら、絶対に瞬殺される。エリス様が悪役を喜んでやるとおっしゃったので、少々キツイ戦いをさせてもらった。 それにあの方はアテナに喧嘩が売れるからと、本当に嬉しそうにやっていらした」 既に四人は彼らの言葉を疑ってはいない。 ただ、歴代の聖闘士たちがアテナの為に裏方に回り、逆賊の泥を喜んで被ってくれた事に感謝した。 「では、その事をアテナに!」 ムウが立ち上がる。 「それはしないで欲しい。それがエリス様との約束なんだ」 「何故!」 「同時に我々もまた試されていた。後でアテナに謝罪する為に闘ったのでは、どうしても隙が出来てしまう。 アテナの為に、聖域の為に、そしてこの世の邪悪から人々を救う聖闘士たちを育てる為に、敵であり続けろと言われた」 童虎とアイオロスは互いに顔を見合わせた。 「でも、貴方がたは今我々に話をしている……」 「我々はもうすぐこの世から消える。 今や冥界が女神ヘカテの管轄の為、本当は我々はこの世に止まれないのだ。 こうしていられるのは、エリス様の母君である女神ニュクスが女神ヘカテに依頼して、二日間だけこの世界にいられるという許可を戴いたからだ。 でも、もう我々はその役目を終えたと思っている。 それに黄金聖闘士たちと手合わせも出来たから、歴代の仲間たちに喜んで報告が出来る。 聖域は再び輝きを取り戻すと……」 ジャガーが語り終わった時、いきなりカノンが立ち上がった。 「お前たち、本当にあんな別れで良いのか!」 そう言って彼はジャガーの腕を掴む。 「あのバカ女神、自分だけ良い格好をしやがって」 「そうですね。こっちもやられっぱなしじゃ、腹立たしい限りです」 ムウやアイオロス、童虎も笑いながら立ち上がった。 |
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