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仮面 2

その音色は隣りの金牛宮にも届く。
「……」
ソレントは冥界で聞いたそのメロディに合わせようとフルートを口に持っていったが、思い直して竪琴のメロディを聞く事にした。
「オルフェウス……」
彼は胸が締めつけられるような寂しさを感じた。

「お前ら正気じゃねぇ」
神殿へ無理矢理連れてこられたデスマスクは、思いっきり不機嫌だった。
「黄金聖闘士たちの言葉とは思えないな」
エリスは空に手を伸ばしている。沙織も同じように星空を見ていた。
二人の後ろにはサガ、デスマスク、シュラ、カミュ、アフロディーテの五人がいる。
「ところで、我々をここに連れてきたのはどうしてですか?」
シュラはこのメンバーが呼ばれたことに、不吉なものを感じている。
「お前たちは私の秘密の抜け穴の使用料だ。夜明けまで付き合ってもらうぞ」
ちなみに、沙織にはエリスがどうやって道を作っているのかは、結局判らなかった。
高い使用料である。
エリスは冷たい笑みを浮かべる。
その時、沙織がくしゃみをした。
「ちょっと待て!なんで俺たちが!」
激昂するデスマスクをシュラが羽交い締めにして止めた。
直ぐにカミュとアフロディーテが沙織に自分のマントを掛ける。
「ありがとう。カミュ、アフロディーテ」
沙織は嬉しそうにマントの肌触りを楽しむ。
サガは外から戻ってから自分の宮に帰っていなかったので、着けていない。
「貴女も使ってくれ」
シュラはエリスに自分のマントを渡す。
「私は別に寒くない」
女神は眉を顰めたが、
「見ているこっちが寒いんだよ!」
と、デスマスクがやはり自分のマントを投げ渡したので、渋々その二つを肩に掛けた。
「お前たち、苦労性だと言われないか?」
争いの女神に言われたくないセリフである。