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隠し事 5

一方、部屋から出た沙織たちはゆっくりと階段を登っていた。
(この歩みでは夜が明けるぞ)
サガは後ろにいて、苦悩していた。
「エリス。どうやって階段を使わずに神殿へ行ったの?」
沙織は正攻法で尋ねる。
「教えない」
当たり前のように彼女は答えた。
その表情は人を小馬鹿にした様で、沙織は頬を膨らませる。
「私の知らない抜け道を作ったのね!」
カマをかけてみると、エリスは驚いたような顔をした。
「何だ、気がついたのか。つまらんな。
せっかく聖域の創設時にこっそりと組み込んでいたから、バレないと思ったんだが……。
仕方ない、罠を仕掛けられる前に塞いでおくか」
沙織はサガの顔をちらりと見る。彼はますます苦悩を深めていた。
だが沙織の方は嬉しそうにエリスの腕を掴んだ。
「一回使ってみて!このままだと夜が明けちゃうわ」
可愛らしくお願いポーズを取るが、相手は意地悪な女神。やはり聞き入れたりはしない。
「神殿にたどり着かなくても、別に構わない。ここでも星は綺麗だからな」
確かに恐ろしいほどに空気の澄んだ夜空であった。
手を伸ばせば星が掴めそうな錯覚を感じる程、空が近い。
「神殿の方がもっと綺麗よ」
一度は体験してみたい沙織だった。
「アテナ、そのような怪しい事はお止めください。必要なら私が連れて行きます」
思い余ってサガが口を出すと、今度はいきなりエリスが折れたのである。
「双子座の健気さに免じて、一度だけ使ってやる」
「本当♪」
「ただし、使用料は高くつくぞ」
エリスは沙織やサガの返事を聞かずに、素早く右手を上げた。