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隠し事 1

そして怒濤のデスクィーン島探訪は、五人の青銅聖闘士と二人の少女の発見で幕を降ろす事になった。
「長い一日だったな……」
聖域に着いた時、アルデバランは思わずそう呟いた。全員、体力よりも精神的に疲労していた。
「みんな!ご苦労様!」
十二宮前の広場では沙織とシャイナ、そしてムウとアイザックが待っていた。
「只今、戻りました」
沙織に出迎えられてサガは少し面食らった。
「アテナ、もう身体は大丈夫なのですか?」
「少し休んだら、気分が良くなったわ。みんなに心配かけてごめんなさい。
それでこの方たちは誰?」
その横でアイザックがカノンの抱いている少女の顔を覗き込んだ。
「シードラゴン、セイレーン。誰がテティスをこんな目に!」
「それは分からない。 全てはアテナたちの試練が終わって、身体が元に戻ってからだ。 あいつらに会うのはそれまで我慢しろ」
カノンの言葉にアイザックは怒りを露にした。
「何でだ!」
「連絡をしたら最後、誰があいつらを止められる? 二日間だけの話だ。永遠に黙っていろと言っている訳じゃない」
アイザックは納得しかねると言いたげな顔をする。
「それに騒ぎを起こせば、我々よりエウリュディケーさんの方が責任を取らされかねません。女神ヘカテは自分の側近にすら、懲罰の鎧を着けさせる方です」
ソレントの駄目押しに沙織の方が慌てた。
「絶対に止めなさい」
沙織の剣幕に、アイザックは渋々頷いた。
サガは海闘士たちの様子を見て、自分の中に何かが確実に蠢いているのを感じ、抱えている少女の方に視線を移した。
少女が目を覚ます気配は感じられない。 その時彼は全員の視線が自分に向けられている事に気付いた。
「ア……アテナ、この方は一緒に閉じ込められていた少女です」
沙織はもう一人の少女の顔を覗き込んだ。
「このまま連れてきたという事は、このマスクは取れないという事ね」
沙織が謎の少女のマスクに触れる。するとマスクは淡く光った。
「…………」
少女の唇が動く。沙織は耳を寄せたが何を言っているのか分からない。
そしてマスクは元の色に戻り、沙織が再び触れても何の反応も示さなかった。
「女神エリスは聖域で預かって貰えと言っていましたが、如何いたしましょうか?」
アイオロスの言葉に沙織はしばらく考える。
「それじゃぁ、海辺にある神殿の方へ預かってもらいましょう。それなら後で海闘士たちが彼女に会うのに楽でしょ。 必要なら町にいる引退した巫女たちの力を借りて頂戴」
その言葉にソレントとアイザックは沙織に深々と頭を下げた。
「シャイナ、私の方は良いから神殿の方を神官たちに依頼してきて。 今日は彼女たちをこっちで保護するから、明日には移せるようにする事」
「分かりました」
シャイナは沙織に一礼すると、そのまま聖域の黄昏の中へ去っていった。
「ムウ、空いている部屋はない?」
いきなり聞かれてムウは戸惑った。
「今夜の白羊宮は亡霊聖闘士たちに話をさせる会場ですから、無理ですよ」
賭けに勝ったので、そういう場をわざわざ作ったらしい。
「アルデバランは?」
「喜んでお預かりいたします」
この時ソレントは、アルデバランの存在を心の底から神に感謝した。