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散々言い合った所為か、沙織はすっきりした顔でカノンに近づく。 「その糸をどうするの?」 「アリアドネの糸ですよ」 ミーノスが代わりに答えた。 「迷宮を迷わないようにする為に、糸を目印に通路を歩くのです」 ミーノスは武器として使っている糸を取り出す。 「ラダマンティス、この端を持ってください」 彼は言われたまま糸の端を持つ。 「では、行きましょう」 そう言ってミーノスが歩きだすのをラダマンティスが止めた。 「俺が留守番か!」 「道中、カノンと喧嘩されては迷惑です」 納得のいかないラダマンティスはミーノスの事を睨み付けた。 「ミーノス。ラダマンティスを苛めるでない。喧嘩が始まったら、それはそれだ。 その時はラダマンティスとカノンを放り出せば良い。 海闘士はあと一人いる」 パンドラの意見は非常に合理的だった。 (どちらかだけ残したら、遺恨が残る) 他の闘士たちは、この華奢な少女の判断に頷いてしまった。 「三界の闘士が揃うと、色々大変だな」 エリスは面白そうに笑った。 しかし、根本的な解決になっていない。 故に妥協案としてエリスが自分の槍を出し、それに糸の端を括り付ける事になった。 先頭は糸を持つミーノスと海の気配を探す為にカノンとソレントが歩いていた。 「争いの女神にフォローさせるな!」 エリスは機嫌が悪いらしい。 全員苦笑してしまった。 「だって、エリスが一番用意が良いんだもの」 「何の為にその格好をしている」 これには沙織もぐうの音が出ない。 「……その服はアテナが用意したのか?」 パンドラは地上を守護する女神の格好が、奇妙に思えてならなかった。 「そうよ。グラード財団のスポーツ関係の研究所からもらってきたの」 「グラード財団とは?」 話の展開がどこか奇怪しくて、パンドラは首を傾げた。 「私の実家なの」 聖闘士たちは何も言わない。一番後ろを歩いていたサガは辛そうな顔をした。 それを感じたアイオロスが彼の横に並び肩を叩く。 「サガ、アテナはちゃんとお前の辛さを知っている。あまり自分を責めるな」 「しかし……」 「それを言ったら、私も同罪だ」 悲しげに俯くアイオロスにサガは驚いた。 「同罪?」 「いつか話す。その時はお前に懺悔しよう」 アテナを命懸けで救った男のセリフとは思えず、サガはアイオロスの顔をじっと見た。 「わかった。いつか必ず話してくれ」 悲しげな友の言葉にアイオロスはその背中を軽く叩いた。 そして沙織とパンドラの方では、別の会話が続いていた。 「もし良かったら、パンドラにもこういう服を用意しておくわ。試練の時、どんな事を言われるか判らないから、こっちも準備くらいはしておきましょう♪」 「そうだな。それでは頼むとしよう」 「パンドラの黒髪はとても綺麗だから、髪飾りも用意させてね」 それを聞いて、パンドラの斜め後ろにいたラダマンティスが複雑な表情をした。 |
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