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探検 3

「ミーノス。私に免じてこの男に協力してくれないか?」
上目づかいで祈るように手を合わせたパンドラのお願いに、ミーノスは硬直した。
ラダマンティスは顔を赤くし、アイアコスは目を見開いている。
「わ、判りました……」
ミーノスは汗を流している。
思いがけない援軍のお陰でミーノスの協力が得られたカノンは、ようやくその隣にいる人物に気がついた。
「うわッ!ラダマンティス!」
「今頃気付くか!貴様は〜」
ラダマンティスは拳を握る。今にもカノンを殴りかねない雰囲気である。
「ラダマンティス、そう怒るな」
パンドラに顔を覗き込まれて、彼は激しく動揺する。
「それに私は不用意に争うことは禁じたはずだぞ」
「も……申し訳ありません」
エリスはそんな彼らを見て、
「応用が上手いな」
と、呟いた。
「エリス、彼女に何を言ったんですか」
ソレントはもう投げやりな気分だった。
「時と場合によって顔を使い分ける技量が必要だと言って、あの方法をやってみろと言っただけだ。あのバカ兄たちでは、そういうことをパンドラに教えるのは不可能だからな」
一見すると兄たちの尻拭いをしている妹の図なのだが、ソレントは彼女の行動を鵜呑みには出来なかった。
「よっぽど自分のお兄さんたちが嫌いなんですね」
「……嫌いではないから困るのだ」
でも実際はその立場を利用しまくっているような気がするソレントだった。
パンドラが不思議そうな顔をしてエリスのところへやってきた。
「ああいう仕種はやったことがない。不自然ではなかったか?」
「平気だ。本当は可愛らしく微笑んでやれば完璧なのだが、これは鏡を見て常に訓練しなくては出来ない話だ」
パンドラは少し俯いた。
「パンドラは十三年間、その訓練を放棄してきている。男所帯だった事は仕方ないが、これからは少しづつ同性と喋れるようにしておいた方が良いだろう」
「これから?」
「ちょうどアテナという『天下無敵の我が侭お嬢』がいるから、それ繋がりで同性と話す機会を作ってもらうんだな」
その時エリスの腕を掴む者あり。
「誰が『天下無敵の我が侭お嬢』ですって!」
本人が後ろで睨んでいた。
「アテナが私にそう言ったのを、素直にパンドラに伝えただけだ」
「エリス。それは私が自分に対して言っていい事であって、貴女や他の人が言っていい事じゃないわ」
「そうか、それは悪かったな」
そんな三人の遣り取りを見て、アルデバランが楽しそうに笑っていた。