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続・女王の島 3

そして大地の上に置かれた一輝の方は、パンドラが顔を覗き込んでいた。
「アイアコス……、フェニックスは死んでいるのか?」
「いいえ、温かいですから生きているでしょう」
パンドラの背後では、ラダマンティスが物凄い形相で一輝を睨んでいた。
「何故、フェニックスを拾ってきたんだ」
ラダマンティスは小声でミーノスを問い詰める。
「……意識がなくて無抵抗だったからです」
闘士としての誇りを問う返事だった。
「後はドラゴンだけだな」
アイオロスが呟いた時、デスマスクから連絡が入る 。
「小僧ならもう見つけた。これから戻る」
蟹座の黄金聖闘士はそう言ってさっさと会話を終わらせる。そして彼は手ぶらで戻ってきたのだった。
彼はパンドラと三巨頭の存在に、眉を顰めた。
しかし、彼もまた強力な自制心で彼らの事を無視したのだった。
「デスマスク!紫龍はどうしたのですか」
沙織は嫌な予感がした。
「この島に居させると、どういう訳だか人間の気がまとわりついて離れなかったから、黄泉比良坂に落としてきた」
あまりにも酷い仕打ちに、沙織の目がつり上がる。
「直ぐに紫龍を拾ってきなさい!」
沙織のセリフも酷かった。そんな二人の間に入ったのはアイオロス。
「デスマスク。フェニックスを聖域に連れて行ってくれ。 そしてドラゴンについては向こうで拾ってくれ」
「判った。」
デスマスクは一輝を担いで、即座に聖域へと帰って行く。
「私はサガとカノンを探しに行く。アテナもムウと一緒にお戻り下さい」
しかし、彼女は一瞬の迷いを振り切って、射手座の黄金聖闘士に笑いかけた。
「アイオロス、私も二人を探します!」
射手座の黄金聖闘士は沙織に優しく笑いかけ、頷いた。
(アイオロスはアテナに甘い!)
ムウは心の中で叫ぶ。 しかし、自分もそういう存在がいない訳ではない。
自分も童虎の養い児である春麗に、何かお願い事を言われたら聞いてしまいそうな気がするからだ。
(赤ん坊の頃から知っている所為だろうな……)
牡羊座の黄金聖闘士は溜息をついた。
「射手座、私も行こう」
エリスとソレントも同じようにアイオロスに告げる。
「では、私も行くぞ」
パンドラの意思表示に全員が驚いた。
「パンドラ様、お止めください」
ラダマンティスが説得しようとするが、彼女は聞く耳を持たない。
「城にいて安穏としていては、次の試練が乗り越えられるか不安だ。 この際、訓練を兼ねて行ってみたい」
確かに絶対的な立場で命令する側だったパンドラは、突発的な事柄に対しては経験が乏しい。
これには彼らが折れるしかなかった。
「アテナ、私はこれから星矢を聖域へ連れて行きます。向こうもそれなりに落ち着いているでしょうから、アルデバランにまたこちらへ来るよう言っておきます」
ムウはどうしても冥闘士たちと一緒にいたくないので、黄金聖闘士の良心とも言える男にアテナのお守りを任せようと思った。
彼は星矢を抱えると、その場から姿を消す。
入れ代わるかの様なタイミングでやってきたのは、シャカ。
「アテナ、老師よりこちらに行くよう言われて参りました」
次々と現れる黄金聖闘士たちにソレントは、
(もしかして、闘士って過保護の代名詞か?)
と、思わずにはいられない。
そして自分もその一人なのを凄く実感して、一人で苦笑する。
しばらくして聖域からアルデバランが戻ってきた。