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続・女王の島 1

「サガ!カノン!」
沙織はその場へ行こうと駆けだしたが、直ぐさまムウに止められる。
「ムウ、離しなさい」
彼女はムウの手を引き離そうと暴れた。
「アテナ、落ち着いてください。彼らは黄金聖闘士なんですよ。 あれくらいで死ぬような人間じゃありません」
その意見に同意したのは、ソレントとラダマンティスだった。
「シードラゴンの悪運の強さは、アテナもご存じの筈です」
「あの双子にそんな心配は、するだけ損だ」
二人とも失礼極まりない発言であった。
「でも……」
沙織の不安を宥めたのはパンドラだった。
「あやつらは絶対に帰ってくる。アテナがここにいるのだから」
「パンドラ……」
「アテナが黄金聖闘士の力量を信じなくてどうする」
そういわれて沙織の身体から力が抜ける。ムウは彼女から手を離した。

大地が大きく揺れた直後、黒い邪気は何かに悶え苦しむかの様に、大きくうねる。
「あいつらは何をやったんだ?」
エリスは腕を組ながらその様子を見る。
そしてそれは、大地に穴が開いたかのように渦を巻きながらその姿を小さくしていった。
「面白い奴らだ」
エリスはその中心に立っている二人の冥闘士を見つけた。そのうちアイアコスの方が、一人の闘士を抱えている。
二人は高く飛び上がると、エリスの元へ舞い降りた。
「フェニックスを見つけたようだな」
エリスは一輝の顔を覗き込む。
「邪気がこいつにまとわりついていた」
アイアコスは徐々に小さくなっていく、黒い邪気の方を振り返った。既に土に吸い込まれるかのように、そこには荒れた大地が見えている。
「あの気の塊は、フェニックスの聖衣の持つ再生能力を欲していました。その執着が原動力だったようです」
「手に入れられないものを望むのが人間だ。 どうやら先程の大きな揺れが最後だったようだな」
辺りは静寂に包まれている。
死の女王の島と言われるだけあって鳥も飛んでおらず、その静かさは逆に人の心を不安にさせる。
ミーノスは遠くに目をやった時、再び石像の幻を見た。
(あれは何なんだ?)
幻はその姿を歪めると、空気に溶け込むように消えた。